トロ箱
トロ箱(トロばこ)とは、魚介類の輸送に用いる容器(魚箱)の俗称。語源は定かでないが、トロール船で使われていたことからトロ箱の俗称が生まれたとする説がある。1960年代まで木製のトロ箱が主流だったが、1970年代から発泡スチロール製のものが普及していく。
トロール船で使われたことからトロ箱の呼称が生まれたとする説があるが、語源は定かでない[1]。1922年に刊行された水産技術書では、深さ5、6寸で鮮魚が10貫匁程度入る木箱がトロール箱またはトロ箱と呼ばれていると説明する[2]。漁港近くの木工所で作られた蓋なしの箱を用いるのが一般的だったが、細かな構造や寸法には地域差があった。木製のトロ箱は手鉤での取り扱いが可能な耐久性を持っていたが、箱材料となる廃材の供給が不安定であったほか、木製であるがゆえの水漏れ、保冷性の確保が課題とされた[3]。この課題を解消するため、1960年代には金属・耐水段ボール・合成樹脂といった新たな箱材の開発が本格化する[1][3]。
1970年代に入ると、発泡スチロール製の蓋付きのものが普及していく[4]。角上魚類によれば、自社が原山化成工業に依頼して開発したものを1972年に築地市場に持ち込んだことが始まりとのことであり、手鉤で扱えない不便さはあったものの保水性・保冷性に優れていたため、木箱自体には困難であった新潟から築地への活きイカの出荷が可能となり、これを見た他の卸業者が追随して類似品の使用を開始したとする[5][6]。各地域で発泡スチロール製トロ箱を製造するメーカーが急増し、1975年には過当競争とまでいわれる状況になった[7]。1990年代初頭には築地市場に持ち込まれるトロ箱の約9割が発泡スチロール製となる[4]。
「ポリトロ箱」ともいわれた発泡スチロール製のトロ箱は、1回限りの使い捨てを前提としたため、普及と同時に使用後の処理の問題も発生し、1970年代後半には処理装置の市場設置が始まっていく[4][8]。また、使用後のポリトロ箱をプランター代わりにするポリトロ園芸も広まっていく[8]。
出典
[編集]- 1 2 谷川英一 編『水産物の鮮度保持・管理』恒星社厚生閣、1970年、110-112頁。doi:10.11501/12643367。
- ↑ 伊谷以知二郎 編『最新水産製造講義 下巻』裳華房、1922年、733-734頁。doi:10.11501/960260。
- 1 2 『水産年鑑 昭和42年版』水産週報社出版部、1967年、319-330頁。doi:10.11501/2473005。
- 1 2 3 時事通信社水産部 編『にっぽん魚事情』時事通信社、1998年、213-217頁。ISBN 4-7887-9822-0。
- ↑ 石坂智惠美『新潟を有名にした七人の食人 「食」と生きる、英知あふれた人生物語』新潟日報事業社、2000年、76-79頁。ISBN 4-88862-789-4。
- ↑ 「魚尻追い求め 2 鮮度保つ発泡箱 新潟発 優れた断熱性 全国を席巻」『新潟日報』2025年5月25日、朝刊23面。
- ↑ 「スチレン製魚箱、参入ラッシュ、業界は過当競争恐れる フォームスチレン工業会調査」『日経産業新聞』1975年11月28日、7面。
- 1 2 『プラスチック語録 知って欲しいプラスチックのすべて』日本プラスチック工業連盟広報部会、1977年、139-141頁。doi:10.11501/12702835。