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お喋りなご婦人

貧血気味な私は
鉄分摂らなきゃなーと思うときに
餃子の王将へ行き、レバニラ炒めを食べる。
ついでに、せっかく来たのだから
ガッツリ食べてやろうと何故か意気込む。

以前、天津炒飯というメニューを知って
なんてわんぱくなメニューだろうとそそられた。
普段、王将に限らず
中華屋さんへ行ってもあまり天津飯は頼まない私だけれど
天津炒飯は何故かそそられる。

レバニラが目的だったにもかかわらず
ジャストサイズのレバニラと
天津炒飯を注文した。

先に運ばれてきたのはレバニラだったので
お腹が空いていたこともあり
先にいただく。
ほどなくして天津炒飯も運ばれ
ひとり黙々とテーブルで食べていた。

そこへ同じくひとりのご婦人が
2つ隣のテーブルに座り
バイトの若いお兄ちゃんに親しげに話しかけていた。
特に気にせず食べていると

「あなたのそれなあに?
 とっても美味しそうね。」
と話しかけられた。

まさか2つ隣のテーブルから
目線と言葉が向けられると思ってなかったので
少しどぎまぎした。
ご婦人は歳のころ70代か、いや80代か。

「あ、えっと、天津炒飯です…」
と、スルーするのもなんなので答える。

とっさに答えたので
天津炒飯だったか、炒飯天津だったか
正しいのはどっちだっけ、と
どうでもいいことで頭が混乱した。

ご婦人は結局、
いつも頼んでいるという他のメニューを注文したようだったが、それも別にどうでもよい。

食べるのを再開すると
再びご婦人が話しかけてくる。

「それ美味しそうね。今度私も食べてみようかしら。私はいつも中華飯と餃子を頼むの。」
と、常連と思われる情報を提示する。

「あ、でしたら、これです。」と
先程のあやふやな私からの情報を明確にしたほうがいいかと
メニューを開いて指差してご婦人に提示する。

私のその反応にご婦人は
「親切にありがとう。
 私は、ここに来て、それから向かいの喫茶店でコーヒーを飲むのが好きなの。」
と、新たな情報を付け加える。

それから、ご婦人が頼んだメニューが運ばれるまでの間ずっと
ご婦人がこの店まで来る経路や
身の上話&思い出話につきあうこととなった。
もちろん、合間を見ながら天津炒飯を口に運んだ。
食べてるのにごめんなさいね、と言いながら
ご婦人のお喋りは止まらない。

さらに「あなたの下のお名前は?」と尋ねられ
少し戸惑ったが答えて、
こちらも聞かれたならマナーとして
ご婦人の名前も伺った。

ミヨコ(仮名)と名乗ったご婦人は
私の名前を覚えたわ、と言いつつ
しばらくして確認のため再度聞かれて
完全にインプットされた。

お先に失礼します、と席を立つ私に
ミヨコさんはにこやかに
「またお会いしましたらお声かけますね。」
と微笑まれた。

初対面の人に、瞬時に自身のことを話す人を
私はとても感心する。
私にはできない芸当だから。
同時に戸惑いは隠せないけれども。

特にご年配の方がそうなのか、
以前にも、多少顔見知りの人ではあったけれど
ほんの短い数分の間に
その人の一週間の行動を話されたことがある。
電車の乗り換えの間の数分、歩きながらの出来事だった。
もちろん私から訊ねたわけではない。

今日も、お喋りなご婦人に出会った。
ウクレレ教室のレッスン後
レッスンを行っているカフェのお客さんで
(初めはスタッフの一人なのかと思った)
私たちが何をしているのかと気になったらしく
ガンガン話しかけられた。

教室のメンバーが、上手に話の相手をされ
88歳だというその方は
多少、自虐的なジョークも話しつつ
私も昔はダンスが得意だったと
自身のことも話しつつ
若い頃のダンスのおかげなのか
年齢のわりに背筋がシャンとした佇まいで
コーヒーカップを手にしながら
ぐいぐい私たちに切り込んできてました。

年齢がいったら、ああなるんだろうか。
いや、ああいうタイプの人は
きっと昔から話し好きな人だったんだろうなぁ
と、やっぱり私にはできない芸当だと
感心せずにはいられなかったのでした。

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