自由帳|シロクマ文芸部
「自由帳」が私のところにも配給された。
この国では、書くことのすべてが記録される。
端末も、通信も、思考ログまで。
何を書いても、記録され、評価され、点数がつく。
ただ一冊の「自由帳」を除いて。
十六歳になると、紙の自由帳と専用のペンが配られる。
そこに書いたものは、記録されない。
誰にも読まれない。評価をされない。
生涯でただ一つ、誰にも見られない場所。
何を書いても許される。
「何を書いてもいい」、そう言われて、初めて気づいた。
私は、本当は何を考えているのだろう?
ずっと、誰かに読まれる前提で書いてきた。
点数のつく言葉ばかり、選んできた。
白いページを、私はじっと見つめた。
震える手で、ようやく書き始めた。
「ほんとうは・・・」
そこまで書いて、続きが書けなくなった。
このペンも、国から配給されたものだ。
小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加します。
