見出し画像

**それでも、春に** ── 全六章 ── 『五分で行く』から三ヶ月後** **第五章 答えの手前**

公園を一周して、出口のベンチに座った。
桜のつぼみが頭の上にあって、開くのをただ待っているようだった。

「もう少しだけ待ってくれる?」

とハルカは言った。

「何を?」

「私が、ちゃんとそこにいられるようになるのを」

俺は少し考えた。

待つことは、もう少し得意になっていた。
でも、待つ意味がわからないと待てない。

「一個だけ聞いていい」

「うん」

「俺のこと、まだ好き?」

ハルカは少し目を細めた。
それから、静かに言った。

「好き。それは変わってない」

俺は「わかった」と言った。
それ以上は聞かなかった。
聞かなくていいと思った。

帰り際、改札の前で別れた。

「また連絡する」

とハルカが言った。

「待ってる」

と俺は言った。

電車に乗って、窓の外を見た。
西荻窪を通過した。
今日は、降りなかった。

*(答えは出なかった。でも、なぜか急いでいなかった)*


©

いいなと思ったら応援しよう!