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遺簪墜屨(いしんついく)

【意味】

日頃使い慣れた物への愛着や、それを失った際の惜別の情のたとえ。

【用例】

長年使った万年筆をなくした彼の落胆は、まさに遺簪墜屨だった。

【故事来歴】

[出典]「遺簪」=『韓詩外伝』巻九、「墜屨」=賈誼『新書』諭誠篇。
「遺簪」と「墜屨」は別々の故事が合わさった語。『韓詩外伝』では、孔子が野を旅していると、沢の中で激しく泣く婦人に出会う。婦人は薪を刈る際に蓍草(めどき)で作った簪をなくしたのだと言う。弟子が、粗末な簪をなくしただけでなぜそこまで悲しむのかと尋ねると、婦人は「簪を失ったことそのものを悲しむのではない。故旧を忘れないからだ」と答えた。
一方、『新書』では、楚の昭王が呉軍に敗れて逃げる途中、破れた履を落とした。三十歩ほど進んでからわざわざ引き返して拾ったので、側近が一足の履を惜しむのかと問うと、王は「履そのものを惜しむのではない。共に出たものを共に帰したいのだ」と答えた。これ以後、楚では互いに見捨てない風俗が生まれたという。後世、この二つを合わせて旧物・故旧への愛着を表す語となった。

【類義語】


【対義語】


【補足】

「簪」はかんざし、「屨」は麻や革で作った古代の履物。現代では物への愛着に用いられることが多いが、中国語圏では「旧物・故情を忘れない」「故旧を捨てない」という人間関係の意味にも広がる。『北史』にも「不棄遺簪墜屨」の用例がある。


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