業の循環――透明を分かつ眼:革命の歴史 Vol.25.3
MC:アイ、ユウ
水をきれいにしたのは、
捨てられなかった泥だった。
巨大なフィルター
ユウは、下水処理場を紹介する短い動画を止めた。画面には、青い水と白い矢印で描かれた断面図が映っている。
ユウ:
下水処理場って、巨大なフィルターで汚れをこして、最後に薬品で消毒する場所なんですね。
アイ:
それで全部?
ユウ:
細かいゴミまで取れれば、水はきれいになるんじゃないですか。
アイ:
目に見えるゴミはね。でも、台所や風呂、トイレから流れてくる水には、こしただけでは取り除けない有機物が溶けている。
ユウ:
では、もっと細かいフィルターを使う?
アイ:
近代の下水処理が大きく変わったのは、網目を細かくしたからではないの。汚れを食べる生き物を、都市の施設の中で働かせるようになったからよ。
ユウ:
下水処理場に、生き物がいるんですか。
アイ:
数え切れないほど。
【ちなみに】
現代の一般的な下水処理では、大きなごみや土砂を除き、沈みやすい汚れを沈殿させたあと、微生物を含む「活性汚泥」と下水を反応槽で混ぜる。最後に沈殿と消毒を行い、処理水を川や海へ戻す。
フィルター、沈殿、微生物、消毒は、それぞれ別の仕事を担う。塩素を入れれば、溶けた有機物まで消えてなくなるわけではない。
川が使い切る酸素
アイ:
前回、ロンドンの下水道は汚水を市街地の東へ運んだ。飲み水と汚物を遠ざけ、コレラの経路を断つうえで、それは大きな革命だったわ。
けれど、下流へ着いた汚水は消えていなかったの。
ユウ:
川へ流せば、自然がきれいにしてくれると思っていました。
アイ:
それも、まったくの間違いではないわ。川や土の中にも微生物がいて、有機物を分解する。でも、一度に受け止められる量には限界があるの。
水中の微生物が有機物を分解するとき、酸素を使う。大量の汚水が流れ込めば、分解に必要な酸素も増え、魚や水生生物が使うぶんまで減っていくのよ。
【解説】
水の汚れを示す代表的な指標に、BOD(生物化学的酸素要求量)がある。水中の有機物を微生物が分解するとき、どれだけ酸素を必要とするかを表す値で、一般に数値が大きいほど有機物による汚濁が大きい。
川に「自浄作用」があっても、能力を超える汚水が入れば、溶存酸素が減り、悪臭や生態系への影響が生じる。自然に任せるとは、処理をしなくてよいという意味ではない。
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