叡智の渇き――文明の暴飲:革命の歴史 Vol.25.4
MC:アイ、ユウ
問いに答えたのは、言葉だけではなかった。
画面の向こうで、どこかの水が熱を引き受けていた。
検索欄の向こう側
編集部の窓から差し込む光が、机の上のコップを透かしていた。
ユウは検索欄へ「AI 水 消費」と打ち込んだ。画面には、ペットボトルを抱えたロボットや、ひび割れた大地の上に置かれたサーバーの画像が並んでいる。
ユウ:
AIに質問すると、冷却のために水を使う。十回から五十回で、五百ミリリットル。記事によっては、一回でペットボトル一本を飲むようにも読めます。
アイ:
どのAIが、どれくらいの長さの答えを、どこで返した数字?
ユウ:
また、途中の水路ですか。
アイ:
今回は、数字の前と後ろね。
ユウは記事を開き直した。見出しより小さな文字で、元になった研究へのリンクが置かれている。
ユウ:
二〇二三年に発表された研究。GPT-3を例に、米国のデータセンターで使われる水を推計した……。
アイ:
その研究が示したのは、中程度の長さの応答を十回から五十回生成すると、合計で約五百ミリリットルの水を消費するという試算よ。一回で一本、ではないわ。
ユウ:
十回と十回でも、五倍違います。
アイ:
いつ、どこで動かすかによって変わるから。
【解説】
二〇二三年に公表され、その後改訂された研究「Making AI Less “Thirsty”」は、GPT-3の学習と応答生成に伴う水使用を、サーバーの消費電力、データセンターの冷却、発電に使われる水などから推計した。
「五百ミリリットル」は、一回の質問を直接測った値ではない。中程度の長さの応答を約十~五十回生成した場合の合計であり、モデル、処理量、気象条件、データセンターの場所、電源構成などの仮定に左右される。
ユウ:
嘘ではない。でも、ペットボトルだけを残すと、一つの決まった飲み方に見える。
アイ:
数字は短いほど運びやすいもの。水と違って、途中の管を隠しても見出しまで届くから。
機械の喉
ユウ:
そもそも、機械はどこで水を飲むんですか。
アイ:
飲んではいないわ。計算に使った電気の多くが、最後は熱になる。その熱をサーバーから外へ逃がす途中で、水が働くの。
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