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遠き日の立体魔法|第2話 セッター|第一章 空に座標

Laed:アイ

📚️マガジン:遠き日の立体魔法

人のことなら、見えているつもりだった。
見えていなかったのは、たぶん――自分の方だった。


バキン。

木崎のブロックに叩き落とされたボールが、私たちのコートに転がった。

美里は着地したまま、ほんの一瞬そこを見ていた。私はすぐにボールを拾った。試合はまだ終わっていなかったし、セッターの私には、次のトスを上げる以外にできることがなかった。

結局、私たちは栄陵に負けた。数日後、三年生が引退した。

二〇〇五年、六月の終わり。


先輩たちがいなくなって、最初に変わったのは体育館の広さではなかった。アップを始める声、休憩を終わらせる声、一年生にボールを集めるよう指示する声。それまで誰かが当たり前にやっていたことが、いくつも宙へ浮いた。

その「誰か」が私になったのは、六月の終わりだった。

「次の主将、高園でいくから」

「私ですか」

「他に誰がいる」

理奈の顔が浮かんだ。「理奈とか」と言うと、黒田先生は「渡辺は副だ」と即答した。

「もう決まってるんですか」

「今決めた」

相変わらずだった。

「高園なら、うまくまとめられるだろ」

まとめる。

その言葉は、まだそれほど重く聞こえなかった。私は誰とでもそれなりに話せたし、怒っている人の話を聞くことも、泣いている子の隣に座ることもできた。

だから「分かりました」と答えた。期待された形へ自分を合わせることには、昔から慣れていた。

新チームが始まると、足りないものはすぐに見えた。

理奈のサーブは入る。でも相手を崩せない。奈緒はボールへ入れるのに、先輩と重なると最後の一歩で譲る。佳奈とは中央のテンポが合わず、梓は横への一歩は速いのに、跳んだあとの手が遅れる。真希は器用なくせに、きつくなると露骨に波が出た。

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