遠き日の立体魔法|第2話 セッター|第一章 空に座標
Laed:アイ
人のことなら、見えているつもりだった。
見えていなかったのは、たぶん――自分の方だった。
バキン。
木崎のブロックに叩き落とされたボールが、私たちのコートに転がった。
美里は着地したまま、ほんの一瞬そこを見ていた。私はすぐにボールを拾った。試合はまだ終わっていなかったし、セッターの私には、次のトスを上げる以外にできることがなかった。
結局、私たちは栄陵に負けた。数日後、三年生が引退した。
*
二〇〇五年、六月の終わり。
先輩たちがいなくなって、最初に変わったのは体育館の広さではなかった。アップを始める声、休憩を終わらせる声、一年生にボールを集めるよう指示する声。それまで誰かが当たり前にやっていたことが、いくつも宙へ浮いた。
その「誰か」が私になったのは、六月の終わりだった。
「次の主将、高園でいくから」
「私ですか」
「他に誰がいる」
理奈の顔が浮かんだ。「理奈とか」と言うと、黒田先生は「渡辺は副だ」と即答した。
「もう決まってるんですか」
「今決めた」
相変わらずだった。
「高園なら、うまくまとめられるだろ」
まとめる。
その言葉は、まだそれほど重く聞こえなかった。私は誰とでもそれなりに話せたし、怒っている人の話を聞くことも、泣いている子の隣に座ることもできた。
だから「分かりました」と答えた。期待された形へ自分を合わせることには、昔から慣れていた。
*
新チームが始まると、足りないものはすぐに見えた。
理奈のサーブは入る。でも相手を崩せない。奈緒はボールへ入れるのに、先輩と重なると最後の一歩で譲る。佳奈とは中央のテンポが合わず、梓は横への一歩は速いのに、跳んだあとの手が遅れる。真希は器用なくせに、きつくなると露骨に波が出た。
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