ゆるしの愛とゆるさぬ愛 #9「異なる正義と同じ願い」――第3章:編み込まれた願いの物語
Laed:ユウ
📚マガジン:ゆるしの愛とゆるさぬ愛
同じ真理を求める願いを持ちながら、理性を愛しすぎた人間は、異なる者を最も冷酷な方法で排除し始めた。
異なる正義と同じ願い
「先生、科学や理屈が発達すれば、
宗教の争いってなくなるんじゃないですか?」
放課後の自習室。数学の難問に頭を抱えていた生徒が、ふとシャーペンを置いて溜息をついた。
「『合理性』という名の武器で人を裁き
始めた歴史があるのよ」
私は静かに口を開き、鞄の底で冷たく沈黙している『銀のインク壺』の感触を思い出した。
「『正しさ』や『理性』を愛しすぎた人間は、
自分と違う考えを、一番残酷な方法で
消そうとするのよ」
私は目を閉じ、遠い昔のバグダードに漂っていた血とインクの匂いへとダイブした。
九世紀中頃。 かつて世界中の叡智を集め、あらゆる民族が自由に議論を交わしていた黄金の都バグダードは、重苦しい恐怖に包まれていた。
時のカリフ・マアムーンは、理性を絶対視するあまり、恐ろしい制度を導入した。
「ミフナ(異端審問)」である。
ギリシャ哲学や科学を愛した皇帝は、この「合理的で科学的な神の解釈」に同意しない学者や宗教家を次々と捕らえ、拷問にかけたのだ。
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