遠き日の立体魔法|第3話 キャプテン|第一章 空に座標
Laed:アイ
📚マガジン:遠き日の立体魔法
まとめるというのは、みんなを同じ場所へ動かすことだと思っていた。
二〇〇五年、七月の終わり。
夏休みに入ると、体育館にいる時間が長くなった。朝から使える日は窓を全部開けても熱が抜けず、床に落ちた汗を休憩のたびにモップで拭いた。
三年生が引退して一か月。練習の流れを止めず、一年生を動かし、黒田先生から言われたことを全員へ伝える。それにも少しずつ慣れてきた。
主将になる前と違うのは、ボールが止まっている時間まで気になることだった。誰かが遅れていないか。声が出ていない子はいないか。片づけを一年生だけに任せていないか。私は練習ノートの余白へ、気づいたことを増やしていった。
その一方で、六月末に書いた名前の横も少しずつ変わり始めていた。
理奈は、サーブ練習の時間を自分から増やした。
それまでの理奈のサーブは、入る。狙ったところにも飛ぶ。ただ、受ける側からすれば素直だった。
ある日、理奈が強く打つのをやめた。ボールの中心を押すように手を当てる。飛んでいった球が、奈緒の手前でふっと沈んだ。
「今の、変な球でした」
奈緒が振り返った。
「変?」
「途中で落ちました」
「どこで?」
「えっと……手の前です」
理奈はすぐにボールを拾った。同じフォームでもう一本。今度は普通に回転し、奈緒の胸元まで飛んでいった。
「違う」
理奈が小さく言った。
私は横から見ていた。打点が違ったのか、手の当たり方なのか。何か言おうとしたところで、黒田先生が先に口を開いた。
「自分で探せ」
それだけだった。
理奈は「はい」とも言わず、次のボールを持った。打つ。回る。首を振る。もう一度打つ。
私は練習ノートを開きかけて、やめた。
理奈はもう探している。
佳奈とのコンビは、まだ半分も合わなかった。私が待てば遅れ、早く出せば佳奈が追う。それでも合わなければ、佳奈の方から「もう一本」と言うようになった。
梓は横への一歩なら速い。問題は跳んだあとの手だった。ブロックを抜かれるたびに、着地してから自分の両手を見る。次の一本では、ほんの少しだけ前へ出す。
奈緒の声も増えた。理奈や真希と同じボールへ入った時にはまだ一瞬迷う。それでも、一度譲ったあと、次のボールでは先に「はい」と声を出す。
真希は相変わらずだった。きついメニューの最後になると、急に動きが良くなる。
「真希、最初からそれやって」
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