ガラスの檻のシンデレラ――隣のグリム童話 4Days/Day2
隣のグリム童話
担当MC:サエコ
ガラスの向こうは、いつもよく見える。
扉が開くかどうかは、別の話だ。
「今日は、シンデレラのお話です」
「ガラスのくつ、でる?」
「今日は、靴じゃないかもしれないね」
「じゃあ、なに?」
「読み終わったら、一緒に探してみようか」
ガラスの檻のシンデレラ
著:黒戸聖
古い仕出し屋の匂いがする家に、灯里は住んでいた。
実の母はとうに亡く、父も三年前に逝った。
今この家にいるのは、父の後妻だった継母と、その娘二人。灯里はここで、家事と店の手伝いをして生きている。給料という概念はない。「学費を出してやったんだから」と、継母はことあるごとに口にした。
ある朝、リビングのテーブルに、一枚のチラシが広げてあった。
蒲生財団、と書かれた立派なロゴ。
「アカデミックな夢を叶えるコンテスト」。
最高賞金千万円。
最終選考に残るだけで五十万円。
灯里が何気なく手に取ると、継母がすぐにひったくるように取り上げた。眉を寄せた右目の下で、小さな黒子がわずかに歪んだ。
「あんたには、関係無いわよ」
継母はそれだけ言い捨てると、「まったく油断も隙も……アレ、捨てたと思ってたんだけどねぇ」と毒づきながら台所へ戻っていった。
灯里は何も言わなかった。
ただ、継母が去った後のテーブルの足元に、ふと目を落としたとき。 なぜかもう一枚、皺の寄ったチラシがぽつんと落ちていることに気づいた。まるで、見つけてもらうのを待っていたかのように。
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