【映画】「スワロウテイル 4Kリマスター」感想・レビュー・解説

これは面白かったなぁ。正直、ストーリー的にはあってないようなものというか、ストーリーテリングで惹きつける作品じゃないから、普段の僕ならそんなにピンと来ないはずなんだけど、とにかく作品全体の雰囲気がメッチャ良かった。なんかずっと、不思議な世界に連れてかれてるみたいな感じだったなぁ。

というわけで、まずは内容の紹介を。

舞台となるのは、「むかしむかし、円が世界で一番強かった頃の日本のある街」である。その街には、円を手に入れようと移民が集まってきており、移民たちはその街を「円都(イェンタウン)」と呼んだ。しかし日本人はその街に棲む移民を嫌っており、彼らを「円盗(イェンタウン)」と呼んでいた。

そんな街で暮らしていたある少女は、母を亡くしたことであちこち大人をたらい回しにされ、最終的にはグリコと名乗る娼婦と一緒に暮らすことになった。彼女たちは、あくどいことをして金を稼ぐ何でも屋「あおぞら」で働き始める。上海出身のフェイホンは、グリコに惚れているようだ。

少女には名前がなかったのだが、グリコは、自身の胸に掘ったアゲハチョウの入れ墨から、彼女に「アゲハ」という名前を付けた。アゲハは普段、グリコが客を取っている部屋の押し入れでひっそりしていた。

しかしある日、客だった葛飾組のヤクザである須藤にアゲハが襲われてしまう。どうにか、隣人の黒人ボクサーに助けてもらったのだが、その際彼は須藤を窓から突き飛ばしてしまい、須藤はそのまま死んだ。グリコたちはフェイホンらに助けを求めて須藤の死体を埋める。

しかしその際、須藤の腹の中からなんと、テープレコーダーが出てきて……。

というような話です。

まあ、ここまでが前半って感じかな。で、後半では、色々あって大金を得たフェイホンらが、グリコのためにライブハウスの経営に乗り出す、みたいな話になっていく。

で、さっきも書いた通り、ストーリー的には特にどうってことはない。1つ、これは僕の読解力がなさすぎって話なのだが、僕にはどうしても「何でみんながカセットテープを追い求めてるのか?」が観ている間は理解できていなかった。鑑賞後に公式HPを見て(4Kリマスターの公式サイトが存在している)、ようやくその理由を理解した。なるほどなぁ、そういうことだったのか。いや、これはたぶん、僕が鈍いだけだと思うが。

で、そんなわけで物語的にはそんな大層なことはないのだが、本作はとにかく全体の雰囲気が凄く良かったなぁ。

まずとにかく、勢いというかスピード感というか、そういう部分が良かった。ストーリーとか役者の台詞回しが早いとかってことではないのだけど、編集なのかなぁ、なんかテンポよくポンポン進んでいく。まあそれ故に、「こいつ誰?」とか「何でこうなった?」みたいなことにもなるのだけど、ストーリー重視の作品ではないので、それはあまり大した問題にはならない。

あとは、言葉の要素も大きいだろう。本作は、日本人キャストも英語やら中国語やらを話す(三上博史が演じたフェイホンは日本語を一切話さなかった)という感じで、しかも、アジアの屋台とかで飛び交っているようなやかましい系の会話なので、そういう言葉の感じもスピード感の演出に繋がってるんだろうなと思う。

あとはとにかく、元気、というか、活気がある。「円が世界で一番強かった頃の日本」が舞台になっているということもあるし、「そんなゴールドラッシュの様相を呈する日本に金目当てでやってくる移民」が主人公なので、なんか凄く活気に満ち溢れていたなという印象が強かった。登場人物たちは割といつも大変な状況にいるわけだけど、それでも、みんなパワフルというか、楽しそうなんだよなぁ。これもなんか凄く、「発展途上国のアジア」みたいな印象で、「なんやかんやあるけどパワフルに生きていくぜ!」みたいな感じは凄く良かった。

で、あとはなんと言っても役者だよなぁ。素晴らしいやろ。三上博史、江口洋介、渡部篤郎、山口智子、大塚寧々とビッグネームを集め(ただ、30年前の時点で彼らがビッグネームだったかは知らない)、さらにCharaだもんなぁ。Chara、メッチャ良かった。主題歌の『あいのうた』も懐かしさしかなかったもんなぁ。そうか、『スワロウテイル』の主題歌だったのか。いやはや、名曲。Charaに、本作以前に役者としての出演経験があったのかは知らないが、本作では「それなりに日本語が喋れる中国人娼婦」というなかなかややこしい役を演じてて、ハマってたんだよなぁ。良い存在感だった。

そしてそんな中で、本作の主役級の存在なのがアゲハで、彼女を演じたのが伊藤歩である。たぶん僕は彼女の存在を、本作を観るまで知らなかった気がする。超ド級の役者陣の中に混じってほぼ出ずっぱりみたいな役柄を演じたわけで、まあ大変だったんじゃないかなと思う。でも、彼女もまた良い存在感だった。

しかししかし、本作で僕が一番凄いなと思ったのが桃井かおりである。この人やっぱ凄いな。なんかもう別格だった。ラストの方でちょろっとしか出てこないのに、抜群のインパクトを残しているなと思う。凄いものだ。しかし、桃井かおりの演技の何が凄いんだよなぁ。なんか樹木希林みたいな感じで、樹木希林も、凄いことは分かるけど何が凄いのかは分からない。桃井かおりもホント、何が凄いんだろう???

岩井俊二の映画は全然観てなくて、『キリエの歌』ぐらいだったんだけど、少し前に目黒シネマでリバイバル上映してて、『花とアリス』にぶっ飛んだ(『リリィ・シュシュのすべて』はちょっと僕には合わなかった)。で、今回『スワロウテイル』を観たという感じ。いやー、『スワロウテイル』、メチャクチャ良かったなぁ。冒頭でも書いたけど、僕は基本的にストーリーを求めているので、ストーリーで惹きつけられない作品にはあまり興味はないのだが、本作のように「ストーリーとか関係なくメッチャ良いよね!」みたいに突き抜けてくる作品が時々あって、それはやっぱり強い。本作もそういうタイプの作品だなぁ。何回でも観ても飽きずに新鮮な気持ちで観れそうだし、また機会があったら観てみたいかも。

ちなみに、今回の4Kリマスター上映を記念して、『スワロウテイル』のメイキングドキュメンタリー映画『円都』が、YouTubeで9/18まで限定で観れるようだ。僕もちょっとどこかのタイミングで観たいと思う。


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