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文披31題:Day20 包み紙

~無邪気な不屈の精神~
 子どもたちの最近の流行は、折り紙だ。
 文字の練習の書き損じや贈答品の包装紙を小さく切って、各々に作りたいものを作る。手先の器用な少年が鳥を作ると、対抗して少女が花を作り、年若の子どもたちがそれに追従してたくさんの花や鳥が作り出された。
 それをみかけたシスターが折り紙の教本を持ってきて一緒に作りだせば、今度は複雑なものを作るのに凝る子どもや、細く切った折り紙を輪にしてつなげて作る鎖を作る子どもや、細く丸めて剣に似た武器を作り出す子どもまで現れた。
 教会はたちまちに子どもたちの作品であふれ、シスターはそれらを丁寧にそこかしこに飾り、訪れる人々の目を楽しませるように工夫した。すると、かわいらしいと今度は折り紙やら包装紙が教会に持ち込まれ、子どもたちが楽しんで作品を量産するという流れが生まれた。
 子どもたちは初めから綺麗な正方形に切られた折り紙ではなく、なぜか包装紙を好んで使いたがった。切るのが面倒なはずなのに、自分の作りたいものの大きさを自分で考えて確保できるのが楽しいらしい。
 そのうち今度は紙飛行機作りに没頭する子どもがあらわれ、誰が一番見た目が美しく、高く長く飛ぶかを競うようになった。初めは少数派だった紙飛行機作成グループは、「作った後に、さらに盛り上がって遊ぶ」様子に触発され、どんどんと紙飛行機作りに没頭する子どもたちが増えていった。
 最終的には初めに鳥や花を作っていた子どもたちも加わり、それぞれの「恰好がよくて高く長く飛ぶ紙飛行機」を作ることを競い、楽しんでいた。
 そんなときに、シスターが「とっても素敵なものをいただきましたよ」と持ってきたのは、見たことのないほど大きな包装紙だった。包装紙として作られて、必要な大きさに切られる前の、作りたてのものだという。
「包装紙のお父さんだぁ」
 説明を聞いた子どもの声に、みんなが吹き出して笑う。
 早速切り取って折り紙を、と動こうとしたところで、子どもたちの中で「紙飛行機師匠」と呼ばれるようになっていた少年がみんなを止めた。
 切らずに折らないか、という少年の言葉に皆はすぐに理解を示し、歓声をあげる。少年の提案は、
「この紙の大きさで紙飛行機を作ろう」
 というものだった。
 紙飛行機の折り方は提案者の少年が決めた。普段作っている大きさの紙で一度試作し、出来栄えを確認してから実際に折り始める。
 部屋一面ほどの大きさの紙を折るのは一苦労だったが、みんなで協力し、楽しみながら折り上げ、最終的には人一人が乗れるくらいの大きさの紙飛行機が出来上がった。
 できた、と喜ぶ子どもたちはどれくらい飛ぶのかと期待に胸を弾ませたが、ある欠点に気づいたのは、はじめは花を折っていた少女だった。
「どうやってこれを飛ばすの?」
 今更ながらの指摘であったが、確かにそうだ。紙飛行機は人の手で、速度を付けて宙に放つ。最終的には風任せだから、はじめの推進力と角度さえ考えればいい。
 だが、この紙飛行機の大きさを考えると手でもってなすことはできない。
「飛ぶの、見られないの?」
 小さな手をもじもじさせながら小さな男の子が悲しそうに言うのに、紙飛行機の師匠は考え、しばらくして手を打った。そうして幾人かの仲間を呼ぶと、こそこそと説明しあい、結果「飛ばせる」と豪語した。
 大きな紙飛行機を飛ばす日は、晴れて風が心地よく吹く午後が選ばれた。部屋から紙飛行機が運び出され、飛ばす準備が整う。
 紙飛行機は荷台に乗せられ、荷台から伸びる紐を少年たちが握っている。
「それでは、巨大飛行機を飛ばします!」
 高らかに師匠が宣言し、合図をすると少年たちが走り出した。紐に引っ張られ、荷台が引きずられていく。かたかたと揺れる荷台の上で、巨大紙飛行機は揺れ、ふわりと浮いた瞬間。
「今だ!」
 師匠が大きな声で合図をすると、紙飛行機の後ろからどおっと強い風が吹いた。巨大紙飛行機は完全に浮き上がり、空をすい、と飛んで。
 少年たちの頭を飛び越えたあたりで落ちた。
「あ」
 それぞれがそれぞれの声音で一声漏らした後、教会の庭には盛大な笑い声が響いた。
 その後に何度も調整を行い、少しずつ飛距離は伸びているがまだまだ前途多難といったところだ。
「いつか、紙飛行機に乗って遊びたいな!」
「そしたら落ちないようにとか怪我とか気にしないと」
「そもそも人が乗っても大丈夫な強度を……」
 今日も巨大飛行機を飛ばす夢を、少年たちはあきらめなかったし、更なる野望を胸に抱いている。

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