【気になったニュース】去年"却下"された要望を、金融庁はもう一度出した
■8月31日、来年度の税制改正要望が公表された
2026年8月31日、金融庁は令和9年度(2027年度)の税制改正要望を公表しました。家計に関わる項目の中で、最も注目されているのが、NISA(少額投資非課税制度)の非課税保有限度額をめぐる、あるルール変更の要望です。現在のNISAは、保有している商品を売却しても、その分の非課税枠(簿価ベースで1,800万円が上限)が再び使えるようになるのは、売却した翌年からとなっています。これを、売却したその年のうちに使えるようにしてほしい、というのが要望の中身です。
■実は、これは"2年連続"の要望だった
だが、この要望には、注目すべき裏話があります。実は、まったく同じ内容の要望が、1年前の令和8年度(2026年度)税制改正でもすでに出されていたのです。しかし、2025年12月に決定した令和8年度の税制改正大綱では、この項目は実現しませんでした。つまり金融庁は、一度「今年は見送り」と言われた宿題を、翌年にもう一度、同じ内容で提出し直したことになります。会社で言えば、去年の稟議で「今回は見送り」と却下された企画書を、担当者が「いや、これはやはり必要だ」と、翌年もう一度、同じ中身のまま上司に提出し直しているような状況です。粘り強いとも言えますし、それだけこの制度改善への現場のニーズが強い、ということの表れなのかもしれません。
■なぜ、このルールが投資家にとって"不便"なのか
このルールが投資家にとって、なぜ使いにくいのか。具体例で見てみましょう。100万円で購入した投資信託が150万円に値上がりし、これを売却したとします。この場合、非課税枠に復活するのは、値上がり分の50万円ではなく、購入時の元本にあたる100万円分だけです。しかも現行制度では、この100万円分の非課税枠が実際に使えるようになるのは、売却した年の"翌年"からです。図書館の本を今日返却しても、次に新しい本を借りられるのは来月から、と言われているようなもので、年の途中で保有商品を入れ替えたいと思っても、すぐには身動きが取れない仕組みになっているのです。金融庁の要望が実現すれば、この「翌年まで待つ」という制約がなくなり、年の途中でも機動的にポートフォリオを組み替えられるようになります。
■一方、2026年度分ではすでに"実現組"もある
もっとも、金融庁の要望がすべて見送られてきたわけではありません。2025年12月に正式決定した令和8年度(2026年度)の税制改正では、3つの項目が実現しています。1つ目は、これまで大人だけが対象だった「つみたて投資枠」を、18歳未満の未成年にも解禁するというものです。年間60万円まで、非課税保有限度額は600万円で実施されます。2つ目は、NISAの対象商品の拡充。3つ目は、金融機関がNISA口座保有者に対して10年ごと(以降は5年ごと)に義務付けていた住所確認手続きの簡素化です。この確認ができないと新規の買い付けが止まってしまうという、利用者にとって地味に負担の大きかった手続きが、廃止される見通しです。
ちなみに、未成年向けNISAについては、過去に「ジュニアNISA」という似た制度が存在しましたが、原則18歳まで払い出しができない厳しい制限や、途中解約すると過去の利益にさかのぼって課税される仕組みが敬遠され、利用者は全NISA口座のわずか1〜5%程度にとどまり、2023年末に廃止された経緯があります。今回の新しい制度は、その反省を踏まえた設計になっているとみられます。まるで、一度は開けにくすぎて誰も使わなかった貯金箱を、今度はもう少し取り出しやすい形に作り直して、再挑戦しているようなものです。
■まとめ
NISA口座数は2025年6月末時点で約2,700万口座に達していますが、政府が掲げる目標は3,400万口座です。この差を埋めるカギは、これまで利用が伸び悩んでいた若年層や高齢層への普及にあるとされ、今回の未成年向け拡充も、その一環と位置づけられています。今回の「非課税枠の当年中復活」という要望は、あくまで金融庁からの"お願い"の段階であり、実際に決まるのは年末の与党税制改正大綱を待つ必要があります。去年見送られた宿題が、今年こそ提出通りに認められるのか。年末の議論の行方が注目されます。
■関連して注目される銘柄
NISA制度の拡充に関連して、しばしば話題に上る国内銘柄を挙げておきます(特定銘柄の売買を推奨するものではありません)。
-SBIホールディングス(8473):ネット証券最大手グループで、NISA口座数でも業界をリードする存在とされます。制度改善による取引の活性化は、収益機会の拡大につながりやすいとされます。
-楽天グループ(4755):楽天証券を傘下に持ち、同じくNISA口座の主要な受け皿の一つ。ポイント経済圏と絡めた資産形成サービスの成長が期待される銘柄です。
-野村ホールディングス(8604):国内証券最大手で、対面営業を含む幅広い顧客層への資産運用サービスを展開しており、NISA制度の使い勝手向上は、業界全体の追い風として意識されやすい要素です。
※本記事は筆者個人の見解・体験に基づく内容であり、特定銘柄の売買や特定の税制改正の実現を保証するものではありません。投資・税務に関する判断は必ずご自身の責任で行ってください。


