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「すべての人を顧客にする」と「市場を分けない」は同じではない

すべての人に使ってほしい商品なら、セグメントは必要ないのでしょうか。

たとえばユニクロは、LifeWearを「あらゆる人のための服」として展開しています。

性別や年齢、国籍で顧客を狭く限定するというより、広く生活者に向けたブランドです。

それでも、ヒートテックとエアリズムは同じ商品ではありません。

冬と夏でも違う。

寒さに困っている人と、蒸れや暑さに困っている人でも違う。

一人の生活者の中でも、そのとき必要なものは変わります。

ここで少し見方を変えたくなります。

セグメントとは、本当に「人を分類すること」なのでしょうか。


ヒートテックを買う「人」は誰なのか

ヒートテックを買う人を、年齢や職業で説明しようとするとかなり広くなります。

20代も買う。

60代も買う。

会社員も学生も使う。

男性も女性も使う。

では、何が共通しているのか。

寒い時期に、できるだけ快適に過ごしたい。

厚着は避けたい。

薄いインナーでも暖かさが欲しい。

人の属性ではなく、需要を見ると急にまとまりが出ます。

夏になれば、同じ人が今度はエアリズムを選ぶかもしれません。

顧客そのものが変わったのではなく、生活の中で立ち上がる需要が変わった。

セグメントを考えるとき、この違いは大きいと思います。


分ければ、セグメントになるわけではない

セグメンテーションというと、市場をいくつかのグループに分けることだと説明されます。

年齢、性別、地域、所得、会社規模。

もちろん、こうした切り口は使えます。

ただ、分類できることと、マーケティング上意味のある違いがあることは同じではありません。

40代と50代に分けても、同じ理由で商品を選び、同じオファーに反応するなら、その境界はあまり重要ではないかもしれません。

逆に、年齢も職業も違う人たちが、同じ問題を抱え、同じ商品を求めることもあります。

人としては違う。

でも、需要としては近い。

この差を見つけるほうが、実務では重要です。


セグメンテーションの出発点は「違いを見る」ことだった

マーケット・セグメンテーションをマーケティング戦略として明確に論じた重要な論文として、Wendell R. Smithが1956年に発表した論文があります。

そこで出発点になっていたのは、市場には異なる需要が存在するという考え方でした。

最初から顧客を細かいプロフィールに分類することが目的だったわけではありません。

同じ市場に見えても、求めているものが違う。

ならば、その違いを無視せずにマーケティングを考えよう。

セグメンテーションは、分類表を作るためというより、市場の中にある違いを見つけるための考え方だったと捉えるほうが自然です。


「みんなに売る」と「みんなに同じものを売る」は違う

ここでユニクロに戻ります。

「あらゆる人のための服」と考えることと、すべての人へ同じ商品を同じように売ることは違います。

ブランドとしては広く開いている。

その一方で、商品では具体的な需要を見る。

寒さに困る場面。

暑さや蒸れが気になる場面。

動きやすさを求める場面。

求めるものが違えば、商品も伝え方も変わります。

だから、

「すべての人を顧客にする」と「市場を分けない」は同じではない。

ということが見えてきます。


人を分けるより、需要が分かれる場所を見る

これは小規模な事業でも同じです。

たとえば「中小企業向け」のサービスがあるとします。

従業員5人以下。

6〜20人。

21〜50人。

こう分けることはできます。

でも、会社規模が違っても困りごとが同じなら、提案を変える必要はないかもしれません。

一方で、

長年任せていた担当者が退職して、仕事が社長に戻ってきた会社。

業務は回っているが、次の成長に向けて仕組み化したい会社。

この二つでは、会社規模が同じでも必要なものが違います。

その違いによって商品やオファーが変わるなら、マーケティング上意味のある境界です。

セグメントは、人と人の間に線を引くことではなく、

需要や反応が変わる場所に線を引くこと。

そう考えると、ずっと使いやすくなります。


同じ人が、別のセグメントになることもある

需要を軸にすると、セグメントは固定されたものではなくなります。

昨日まで必要なかった商品が、今日は必要になる。

普段は価格を重視している人が、急いでいるときには納期を優先する。

自分で調べる余裕があるときと、トラブルの最中でも選択は変わります。

ここでは、その人が誰かより、そのとき何を必要としているかが効いてきます。

オケージョンによって、同じ人の反応が変わる。

この視点まで入ると、「この人はこのセグメントの人」と固定する必要もなくなります。


DRMなら、セグメントの線を引き直せる

セグメントを作ったからといって、その線が正しいとは限りません。

「この二つの市場では反応が違うのではないか」と仮説を立てる。

メッセージやオファーを変えてみる。

反応を見る。

違いが出れば、その切り分けには意味があったかもしれません。

違いがなければ、こちらが重要だと思っていた境界は、顧客にとっては重要ではなかった可能性があります。

セグメントは、市場を見るために引いた線です。

ならば、反応によって引き直してもいい。


誰を外すかではなく、どこに違いがあるか

セグメントを考えると、

「誰を顧客から外すか」

という発想に寄ることがあります。

でも、広く人に届けたい商品でもセグメンテーションは使えます。

むしろ、多くの人に届けたいからこそ、その人たちを一枚岩として見ない。

同じ商品を見ても、必要になる理由は違う。

同じ人でも、状況が変われば反応は変わる。

セグメントとは、顧客を狭めるためのものではなく、

市場の中に、どんな違いがあるのかを見るためのもの。

そう考えると、「すべての人を顧客にする」と「市場を分けない」が別の話だということが、少し見えやすくなる気がします。

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