徒歩0分の美容室(番外編研究ノート)
○月☓日
最近、
髪が伸びてきた。
そろそろ切るか。
予約を入れる。
予約時間になったので向かう。
徒歩0分。
そう。
我が家の美容室は、
自宅である。
担当は妻。
もちろん、
美容師でも、
理容師でもない。
ただ、
手先が、
器用である。
以前は美容室へ行ったり、
床屋さんへ行ったりしていた。
でも、
「今日切りたい」
と思っても予約が
取れない日があった。
そこで、
「じゃあ、一回切ってみるか?」
と妻。
恐る恐るお願いしてみた。
……
あれ。
これで十分じゃない?
それ以来、
我が家の美容室は
営業を続けている。
しかも、
料金は0円。
一応、
「今日はどんな感じにする?」
と聞かれる。
でも、
自分は髪型にあまりこだわりがない。
だからだいたい、
「旦那として、
隣を歩いていて恥ずかしくない感じで」
と注文する。
かなり抽象的である。
すると妻は、
ネットで髪型を調べながら、
「今日はこんな感じにするか」
と決める。
もう数年お願いしているが、
妻の技術は年々上がっている。
バリカンも買った。
ツーブロックなんかもできる。
もはや設備までちょっと
っぽくなってきた。
最近では
「レイヤーを入れると…」
とか、よくわかんないことを
呟きながら切っている。
知らぬ間に
ちょっと勉強しているらしい。
ちなみに、
我が家の散髪室は風呂場。
切り終わったら、
髪を集めて掃除する。
0円カットなので、
そのくらいは自分の担当である。
娘たちの髪も、
妻が切っている。
年間で考えたら、
散髪代は結構浮いている気がする。
ありがたいもんだ。
髪を切った翌日。
職場へ行くと、
「髪切りましたね」
と言われる。
「えぇ。
妻カットですけど」
すると、
だいたい驚かれる。
「えっ!?
奥さん、美容師さんでしたっけ?」
「いや、全然」
「えぇー!
お店で切ったみたいですよ!」
そんなやり取りを家で妻に話すと、
「へぇ〜」
と言いながら、
少し嬉しそうである。
直接、
「ありがとう。」
と伝えるのももちろん大事だけれど、
誰かに褒められた話の方が、
照れながら喜んでいる気がする。
ちなみに、
妻自身の髪はというと、
たまに美容室へ行くこともある。
でも、
妻の姉に
切ってもらうことの方が多いらしい。
もちろん、
義姉も美容師ではない。
……
世の中には、
資格がなくても、
上手な人がいる。
どうやら、
我が家の美容師免許は、
血縁で受け継がれるらしい。
たぶん。
以上、研究ノートより
