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若者の「海離れ」から考える。人を動かすのは、魅力の提示ではなく「手間の引き算」である。

皆さまのセールスコンサルタント、ごりごりのおちびさんです。
いつもお読みいただきありがとうございます。

カレンダーもいよいよ8月の終盤を迎えました。
夕暮れの風に少しだけ涼しさが混じり、ヒグラシの声を聞くと、夏の終わり特有のなんとも言えない寂しさを感じますね。

夏といえば、海。

誰もが一度は波打ち際ではしゃいだ記憶があるはずですが、この時期になるたび少し寂しく感じるニュースがあります。

それは、年々加速していると言われる「海離れ」です。

なぜ、人は海に行かなくなったのか。
決して、海そのものの魅力が色褪せたわけではないはずです。

青い海、冷たいビール、波の音。
それ自体は今も昔も素晴らしいものです。

問題は、その魅力を味わうために支払わなければならない「見えないコスト」にあります。

タイパ至上主義が浮き彫りにした「摩擦」


海離れの背景にあるのは、「車離れ」と「娯楽の多様化」です。

かつて、海への心理的ハードルを下げていたのはマイカーの存在でした。
車さえあれば、砂まみれの荷物もトランクに放り込み、周囲を気にせず帰路につくことができます。

車が、海特有の面倒くささを吸収する緩衝材として機能していたのです。

しかし、車を持たずに電車やバスで海へ行くとなれば、着替えや周囲への配慮など、移動に伴う面倒くささが一気に跳ね上がります。

さらに現代は、エアコンの効いた部屋で映画を見たり、スマホ一つで無限に時間を潰せる時代です。

「タイパ」や「コスパ」が極限まで求められる中、わざわざ炎天下に出向き、砂まみれになり、渋滞に巻き込まれるという行為は、あまりにも割に合わないと判断されてしまう。

行動経済学の世界では、こうした見えない手間のことを「認知的摩擦」と呼びます。

現代人は、不確実な疲労に対して極めて合理的かつシビアになりました。

どれだけ「海は楽しいよ!」と魅力を提示されても、脳内でレンタカーの返却時間、帰りの渋滞、荷物の処理といった「摩擦」を想像した瞬間、腰が重くなる。

得られる楽しさよりも、支払う摩擦が上回ってしまった結果が、海離れという現象の正体です。

そして、この「タイパ至上主義」というマクロの波は、レジャーの世界だけの話ではありません。

ビジネスにおける顧客の購買行動においても、全く同じことが起きています。

「魅力の足し算」か、「手間の引き算」か


商品を買う、誰かに仕事を依頼する。
そこには必ず「見えない摩擦」が存在します。

しかし、自分の作品やサービスが売れない時、あるいはクライアントからの返信が途絶えた時、私たちは相手が「摩擦」を警戒していることに気づかず、無意識のうちに「自分のスキルや魅力が足りないからだ」と思い込んでしまいます。

そして、ポートフォリオを派手にしたり、「こんなこともできます!」とおまけをつけたりと、必死に「魅力」を足し算しようとするのです。

ですが、クライアントが踏みとどまっている本当の理由はそこではありません。

あなたの目の前にいる顧客もまた、取引に伴う面倒な手続きやコミュニケーションという「摩擦」を、自ら吸収するだけのリソースや専門知識を持っていないのです。

「この人に頼むと、専門用語が多くてコミュニケーションが面倒だ」
「依頼の要件定義からこっちがやらなきゃいけないのかな」
「修正のたびに、また一から説明する労力がかかるのでは」

相手の頭の中にあるのは、こうした取引に伴う見えない摩擦への強烈な警戒です。

ここでお勧めしたい、一冊の名著があります。

本書は、「人を動かしたいなら、背中を押すのではなく、変化を妨げている障害を取り除け」と説いています。

まさに、これこそが私が日々BtoBtoCの商談の現場で使っているアプローチの根幹です。

私は、自社サービスの魅力を過剰に語ることはしません。
その代わり、相手が感じている摩擦を先回りして、徹底的に「引き算」します。

「貴社のフォーマットをいただければそちらで作成しますよ」
「面倒な作業は、すべて弊社のリソースで巻き取ります」

冒頭の海水浴に例えるなら、相手の足元についた砂を払い、シャワーを用意し、渋滞のない帰り道を約束する。

つまり、顧客の面倒くささを自分が肩代わりすること。
これが、「引き算の営業術」です。

相手を動かしたいなら、魅力を足すな


人を動かすために必要なのは、過剰な装飾や、身を削った値引きではありません。

相手が無意識に抱えている「面倒くさい」という見えないコストを言語化し、それらを取り除いてやることです。

「いいモノを作っているのに売れない」と悩む生産者やクリエイターの方へ。

あなたのサービスは、美しい海を見せた後に、顧客へ「砂まみれの足で帰ること」を強要していませんか?

商品そのものの美しさを磨くのと同じだけの熱量で、顧客の「面倒くさい」を消し去る。
この引き算の視点を持つことこそが、価格競争から抜け出し、長く選ばれ続けるための教養です。

過ぎゆく夏を惜しみつつ、ご自身の仕事から引ける「見えない手間」がないか、改めて見直してみてください。

最後に一つだけ。

ビジネスにおいて手間の引き算は鉄則ですが、人生においては必ずしもそうとは限りません。

たまには効率やタイパを手放し、砂まみれになる面倒くささをあえて引き受けてみる。
海で過ごすそんな非合理な1日も、いつかきっとかけがえのない良い思い出になりますよ。

ごりごりのおちびさん


【追伸】

今回の記事で解説した「教養としての営業」について、より実践的なノウハウを知りたい方へ。

「自分のサービスのどこに摩擦があるのか、見つけ方がわからない」
「顧客に面倒くさいと思わせない、具体的な提案の型が欲しい」

そんな悩みを抱えるクリエイターや個人事業主の方に向けて、私が営業現場で実際に使っているテクニックをnoteにまとめました。

実は、商談で言われる「高い」「少し検討します」という断り文句の正体も、多くの場合、顧客が抱える「見えない摩擦」への警戒です。

その摩擦を先回りして消し去り、相手に一切のストレスを与えずにクロージングへ導く。

よろしければご覧いただき、皆さまのビジネスのお役に立てていただければ幸いです。

▶︎ 【悪用厳禁】「高い」「検討します」を論理で崩す。富裕層が魔法にかかったように首を縦に振る『魔法のキラーフレーズ』虎の巻【厳選10選】


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