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【野球選手の慢性腰痛、本当の原因とは?】「腰が痛い=腰だけが悪い」では説明できない、回旋・運動連鎖・負荷蓄積の問題

はじめに


「腰が痛いから、腰をマッサージする」

「腰が硬いから、腰をストレッチする」

「腹筋が弱いから、プランクを増やす」

野球選手の腰痛に対して、このような対応が行われることは少なくありません。

もちろん、腰部周囲の筋緊張や可動性、体幹機能を確認することは重要です。

しかし、野球選手の腰痛は、腰だけを見ても原因を捉えられないことがあります。

投球や打撃では、下半身で生み出した力を、骨盤、体幹、肩、腕、バットへと伝えます。

腰部は、その運動連鎖の中央に位置します。

そのため、

・股関節が十分に動かない
・骨盤と体幹の回旋タイミングが乱れる
・片脚支持で骨盤を安定させられない
・高速回旋を体幹で制御できない
・投球や打撃の反復負荷が蓄積する

といった問題があると、腰椎が不足分を補わなければならなくなります。

今回取り上げるナラティブレビューでは、野球選手の慢性腰痛について、発生率、腰椎障害の種類、投球・打撃動作との関係、動的筋力、可動域、運動連鎖のタイミングなどが整理されています。

論文が示した中心的な考え方は、次のものです。

野球選手の慢性腰痛は、腰だけの局所的な問題ではない。
筋力、可動域、回旋タイミング、機械的負荷が複合して発生する可能性がある。


実際、論文では野球選手の腰痛につながる可能性のある要因として、

・異常な動作
・不適切な運動連鎖のタイミング
・大きな機械的負荷
・腰骨盤部の筋力不足

が挙げられています。

腰は、下半身と上半身をつなぐ中継地点


野球障害の研究では、肩や肘が強く注目されてきました。

投手の肩・肘障害は頻度が高く、競技人生にも大きな影響を及ぼすからです。

しかし、腰椎は、投球や打撃のキネティックチェーンにおいて極めて重要な部位です。

下半身で生み出したエネルギーは、骨盤と体幹を経由して上半身へ伝えられます。

論文では、骨盤と体幹の動きが投球エネルギーの約50%に関係すると紹介されています。

つまり、腰部は単に身体を支える場所ではありません。

・下半身から受け取った力を上半身へ伝える
・高速回旋中に脊柱を安定させる
・投球や打撃の加速を作る
・リリースやインパクト後の回旋を減速する

という役割を持ちます。

この中継地点がうまく機能しなければ、力の伝達効率が低下するだけでなく、腰椎そのものへ負荷が集中します。

野球選手の腰痛は、どのくらい多いのか


論文の要約では、現役野球選手における腰痛の有病率は約3〜15%とされています。

大学・プロ野球選手に限定すると、腰部障害の発生率は約8.3〜15%と報告されています。

ただし、腰痛の頻度は研究によって大きく異なります。

これは、

・対象年代
・競技レベル
・腰痛の定義
・急性か慢性か
・自己申告か医療記録か
・障害者リストに登録されたか

などが統一されていないためです。

軽度の腰痛であれば、選手が試合や練習を継続することもあります。

その場合、医療記録や障害者リストには残らないため、実際の腰痛発生数は過小評価されている可能性があります。

論文でも、症状が短期間で軽減し、正式な離脱登録が行われなかった選手は統計へ含まれないことがあると指摘されています。

大学野球選手では、腰椎椎間板変性が多い


特に注目すべきなのが、大学野球選手の腰椎椎間板変性です。

大学競技者308人を対象とした横断研究では、野球選手は非競技者と比べて、椎間板変性と診断される可能性が最大3.23倍高いと報告されました。

これは、比較されたバレーボール、バスケットボール、サッカーなどよりも高い値でした。

さらに、日本人大学野球選手では、59.7%に少なくとも1か所の腰椎椎間板変性が確認されました。

変性が多かったのは、

・L4/L5
・L5/S1

で、変性例の57.9%がこの2つのレベルに集中していました。

ただし、椎間板変性が画像上で確認されたからといって、必ず腰痛が出るわけではありません。

画像所見と痛みは完全には一致しません。

それでも、若い大学野球選手に高い割合で構造的変化が確認されたことは、野球特有の反復負荷が腰椎へ蓄積している可能性を示します。

長期間の野球経験が腰痛と関係する可能性


大学新入生4667人を対象とした調査では、競技スポーツ経験者は非競技者より腰痛経験が多い傾向を示しました。

特に、小学生から高校生まで長期間にわたり競技を続けた学生では、腰痛有病率が71.7%と最も高くなっていました。

競技別では、野球経験者の生涯腰痛リスクは非競技者の約3.2倍でした。

この結果からは、単発の投球や打撃だけではなく、

長年にわたる非対称・高速・反復的な回旋動作の蓄積

が腰部へ影響する可能性が考えられます。

ただし、この研究は自己申告を用いた横断研究です。

そのため、野球経験が直接腰痛を引き起こしたと断定することはできません。

それでも、長い競技歴と腰痛経験の間に関係が見られたことは、育成年代からの負荷管理を考えるうえで重要です。

大学野球では体幹・腰部障害が全障害の15%


NCAAの傷害監視データでは、大学野球における全障害の15%が体幹・背部に発生していました。

また、体幹・背部障害が多かったのは投手と打者でした。

投手と打者には、共通する特徴があります。

どちらも、

・骨盤と体幹を高速で回旋する
・片脚支持から大きく体重移動する
・身体の左右で異なる動きを行う
・同じ方向の回旋を繰り返す
・競技動作を高頻度で反復する

必要があります。

つまり、守備だけを行う選手よりも、投球や打撃の高速回旋を繰り返す選手の方が、体幹・腰部へ大きなストレスを受けやすいと考えられます。

プロ野球選手でも投球・打撃中の腰椎障害が多い


MLB選手の椎間板ヘルニアを調べた研究では、発症場面として、

・打撃中:38%
・投球中:27.6%
・内野守備中:20%
・外野守備中:14.4%

が報告されました。

打撃と投球の合計が全体の半数を超えています。

これは、投球・打撃に伴う回旋、伸展、側屈、前傾、減速が、腰椎へ大きな負荷を与える可能性を示します。

ただし、椎間板ヘルニアの原因が投球・打撃だけにあるとは限りません。

長年の負荷蓄積、身体特性、回復不足、既往歴などが重なり、特定の動作をきっかけに症状が表面化した可能性もあります。

野球で腰椎へ加わる4種類の負荷


投球や打撃では、腰椎へ単一方向の力だけが加わるわけではありません。

主に次の負荷が組み合わさります。

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