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いなくなったわけじゃなかった



30歳って、もっと大人だと思っていた。

中学生の頃の私は、30歳の人を見ると、何でも知っていて、何でもできて、自分とは別の生き物みたいに思っていた。

私のクラスの担任は数学のO先生。

隣のクラスの担任は英語のF先生だった。

「グッモーニング、エブリワン!」

F先生はいつもにこにこしていて、子犬みたいな笑顔だった。


O先生は姉御肌で、サバサバしていて、何かあったら全部受け止めてくれそうな人だった。


あるとき、
「O先生とF先生って付き合ってるんじゃない?」
そんな噂が流れた。


姉御と子犬。
今思えば、確かにお似合いだったのかもしれない。

もちろん、多感な中学生の噂話。本当かどうかなんて、どうでもよかった。


ただ、30歳という年齢が、やけに遠くて、やけに大人に見えていた。


それから私は短大生になった。


片道1時間半の電車に揺られて通学する毎日。

授業はそれなりに忙しかったけれど、私たちはいつもどこで現実逃避するかばかり考えていた。


HEY!HEY!HEY!のテレビ観覧に応募して、観に行った。


好きなアーティストのライブにも行った。


お笑いも観に行った。


カラオケに行けば、中島美嘉を熱唱した。

もちろん、本人になりきって。


渋谷のファーストキッチンで、フレーバーポテトを食べる。好きな味はバター醤油。


袋を振るたびに、濃い味が混ざってくあの感じが好きだった。

あの頃の会話も、たぶん同じだった。どうでもいい話を重ねて、どんどん濃くなっていく。
それだけで十分だった。


HEY!HEY!HEY!の観覧で初めて見た安室ちゃんは、同じ人間とは思えないくらい顔が小さかった。

学祭にはMISIAが来てくれた。

小柄な体から出てくる声は、想像よりずっと大きくて、会場の空気ごと揺らしていた。

芸能人を見かけただけで、翌日の休み時間はそれだけで盛り上がった。

「あの人見た」

「昨日あそこにいた」

それだけで一日が持った。

ちなみに、友達の彼氏の話も私たちの大好物だった。私もプチ遠距離の彼がいた。でもそのことは、仲良しな子にしか言っていなかった。
芸能人のお忍びカップルみたいに、こっそり付き合っていた。


今思えば、何をそんなに隠していたんだろうね。
でも、あの頃はそれでよかった。


私は、しっかり女子大生を満喫していた。


そして今の夫と結婚して、月日が流れて29歳。

私は息子を産んだ。

26時間かかったお産だった。

一日が終わって、また一日が始まって、それでもまだ終わらなかった。

たぶんあの時間で、私は少しだけ年を取った。
6歳くらい。そんな気がする。

やっと生まれた。わたしは号泣していた。

小さくて、あたたかくて、さっきまで自分の中にいたことが信じられなかった。


そして30歳。

中学生の頃、30歳だったF先生。

あんなに大人に見えていた年齢に、私はなった。

30歳の年、中学校の同窓会があった。

私は母親1年目だった。
子育て以外のことは、ほとんどできていなかった。

髪も歯も、まともに整っていない。

それでも久しぶりにトリートメントをして、髪を巻いて、ヒールを履いた。

まだ1歳の息子を預けて、同窓会へ向かった。

鏡に映った私は、久しぶりに「お母さんじゃない自分」だった。でも、どこかぎこちなかった。
まるで、子どもに大人の服を無理やり着せたみたいで。


会場には懐かしい顔が並んでいた。O先生もいた。あの頃と変わらない笑顔で、相変わらず姉御のままだった。

その姿を見て、ふと思った。

30歳って、あんなに大人に見えたのに。今の私はどうだろう。


母親になって1年。毎日が初めてで、分からないことばかりだった。自分のことは、ずっと後回し。30歳になれば、もっとちゃんとした大人になっていると思っていた。


でも、そうではなかった。


それから、何年も経った。

息子は11歳になり、娘は3歳になった。

息子が10歳になった頃、私は文章を書くようになった。

何を書こうか考えていると、昔のことがふと浮かぶ。

姉御みたいなO先生と、子犬みたいなF先生。

渋谷のファーストキッチン。

バター醤油味のポテト。

芸能人を見かけて騒いでいた休み時間。

お忍びカップルみたいに付き合っていた彼。

26時間かかったお産。

そして、息子を抱いていた30歳の私。

そういえば、私はこんなふうに生きていた。

こんなことで笑っていた。

こんなことで、十分だった。

書いているうちに、少しずつ思い出していく。

ああ、そうだ。

私、まだここにいるんだ。

今、ちょっと楽しいかもしれない。

嬉しいかもしれない。

そんな感覚が、ふと戻ってくる。

鏡の中の私は、すっかりおばさんになった。

髪も歯も、相変わらずきれいとは言えない。

でも、10年前より少しだけ機嫌がよさそうだ。

母親になったとき、私は「私」をどこかに置いてきたと思っていた。

もう戻ってこないものだと思っていた。

でも違った。

いなくなったわけじゃなかった。


文字にすると、ちゃんとそこにいた。

私は、あの頃に戻りたいわけじゃない。

ただ、昔の私を思い出したら、今の私もそんなに悪くないと思えるようになった。

そう思えるようになったことが、今はちょっと嬉しい。

だから、忘れたくない。

母親になったからって、母親になる前の自分まで消さなくていい。

忙しい毎日の中で置き去りにしてしまった自分を、たまには迎えに行ってもいい。

書くことは、私にそれを思い出させてくれた。


昔に戻るためではなく。


昔の私が、ちゃんとここにいることを忘れないために。



エッセイ初体験!!


いや、これエッセイになってた?😂

そんなレベルではありますが、普段とはちょっと違う文章を書くことができて、すごく楽しかったです✨

この記事は

#エッセイしりとり

に参加させていただきました😌

前の人が書いたエッセイタイトルの最後の一文字から始まるタイトルで、次のエッセイを書く企画です。


私にバトンを回してくれた kenさん。

kenさんが書いた記事のタイトルは、

「屁が、なぜか愛しい。」

最後の文字は「い」

そのため、私は

「いなくなったわけじゃなかった」

というタイトルで書かせて頂きました!!

kenさんの「屁」から始まるエッセイ、めちゃくちゃ面白かったです🤣✨

しかも「わかる〜!」と共感できるところもあって、笑いながら読ませていただきました😂

kenさん、楽しいバトンを回してくれてありがとう♡



そして、この「#エッセイしりとり」という楽しい企画を考えてくださったマイキーさん✨

タイトルの最後の一文字から、次の人へバトンを渡していく。

一体どんな文字が回ってくるのか分からないところも含めて、なんだかワクワクする企画ですよね😆


⬆️詳しくはマイキーさんの記事へGOです‼︎

そして、マイキーさんの娘さんとの花火デートの記事も素敵でした🎆✨

娘さんと一緒に花火を見に行ってくれるパパ、最高です😍

私も、子どもたちが大きくなっても、いつまでも仲良し親子でいたいなぁと思いました☺️

こんな素敵な機会を作ってくださったこと、そして「書いてみようかな」と一歩踏み出すきっかけをくださったことに感謝です😌✨



さて。

ここからは、私から大好きな方たちへバトンを回させていただきます♡

私の記事タイトル

いなくなったわけじゃなかった

「た」

から始まるタイトルでお願いします✨

一人目🌟ぺぺさん

エッセイといったらぺぺさん💕
娘ちゃんとの何気ない毎日を、こんなに素敵な言葉にできるのすごいなぁって、いつも思っています✨

「小さな幸せ」を見つけるのがとっても上手で、ぺぺさんのnoteを読むと、私までほっこり☺️🌸

大好きなぺぺさんに、バトンを回させていただきます♡
時間がある時に、お願いします〜🥰

二人目🌟みこさん

初期の頃からの私の大切なお友達です✨
みこさんとおばあちゃんになるまで、よろしくねって約束しました♡
子育てや日々の出来事を通して自分で自分を幸せにするを大切にされているみこさん☺️✨
読んでいると、なんだか心がぽかぽかする大好きなnoteです✨
もしよかったら受け取ってください♡



三人目🌟neruさん

子育ての日常や「あるある」を、いつも可愛く、そしてクスッと笑える文章にしているneruさん🥰

日常の小さな幸せを見つけるのも上手で、私もこういうところ、ちゃんと楽しみたいなぁと思わせてもらっています☺️

neruさんの「い」は、どんなエッセイになるのかな?
今から楽しみにしています♡


突然のバトンですので、もちろん決して強制ではありません🙌

お時間があるときに、もし書いてみようかなと思っていただけたら、次の「た」を繋げていただけたら嬉しいです🥰✨


#エッセイしりとり
#初めてのエッセイ

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