企業YouTubeの分析で再生数ばかり追うのをやめた理由|数字に表れない「一人の顧客」の価値
毎週月曜日の朝、YouTube Studioの画面を開くのが憂鬱だった時期がある。
画面に突きつけられるのは、前週に投稿した動画のアナリティクスだ。総再生時間、平均視聴維持率、クリック率、チャンネル登録者数の推移。無機質なグラフと数字の羅列を睨みつけながら、「なぜこの動画は維持率が下がったのか」「サムネイルの文字が小さかったのか」と、一人で頭を抱えていた。
社内運用の担当者として、目に見える実績を出さなければいけない。
そう気負えば気負うほど、私の視線は「画面の向こうにいる人間」ではなく、「画面に表示される数字」ばかりに吸い寄せられていった。
より長く見てもらうために、冒頭の挨拶を削り、テンポを極限まで早め、退屈させない演出を詰め込む。総再生時間や維持率という指標を1%でも上げるための改善を、必死で繰り返していた。
だが、そんな数字の最適化に躍起になっていたある日、決定的な違和感にぶつかった。
グラフの数字が少し持ち直し、よしと胸を撫で下ろしていたタイミングで、社内の問い合わせフォーム経由で1通の連絡が入った。ある中堅企業の部長からだった。
「御社の動画を拝見しました。自社で導入を検討するにあたり、動画内で解説されていた『失敗しやすいポイント』について、もう少し詳しくお聞きしたいのですが」
その問い合わせを見た瞬間、ハッとした。
その方が見てくれたのは、直近の「最適化された動画」ではなかった。むしろ、アナリティクスの数値としてはパッとせず、途中で離脱した人も多く、総再生時間も決して高くなかった、地味な解説動画だったのだ。
数値の上では「失敗」と判定していた動画が、一人の人間の心を動かし、ビジネスの重い扉を開いていた。
その時、自分が陥っていた罠に気づいた。
BtoBの運用において、アナリティクスに表示される数字は、あくまで集計された結果に過ぎない。「総再生時間」を伸ばすための演出や、「維持率」を保つためのテクニックに夢中になるあまり、私は「その動画を見た一人の担当者が、どんな表情で、どんな悩みを抱えて画面を見つめているか」という、最も重要な解像度を見失っていた。
数字を追うのは楽だ。上がった下がったで一喜一憂していれば、「仕事をした気」になれるからだ。
だが、私たちが向き合っているのは、アルゴリズムではなく、画面の向こうで本気で自社の課題に頭を抱えている生身の人間だ。
たとえ平均視聴維持率が低くても、途中で動画を止めてメモをとってくれた人が1人でもいるなら、その動画には意味がある。全体から見れば小さな数字の裏側に、どれだけ深い共感や熱量が潜んでいるか。
それ以来、私はアナリティクスの数値を絶対の「正解」として見るのをやめた。
数字はあくまで冷たい標識に過ぎない。
大切なのは、数字に表れない画面の向こう側の「一人」に向けて、誠実な言葉を届けることなのだと、今でも自分に言い聞かせている。
💡 アナリティクスに振り回されず、「たった1人」に届く動画を作るために 数字の罠を抜け出し、実際に問い合わせへと繋げるための「企画・台本」「社内報告術」「概要欄・CTA設計」の具体的な実務アセットを、以下の完全ガイド(有料記事)として一冊にまとめました。
私自身が現場で試行錯誤しながら作成した「15分動画の台本テンプレート」や「上層部向け月次報告フォーマット」をそのまま公開しています。
再生数を追う消耗戦をやめ、自社のYouTubeを「最も優秀な営業マン」へと育てたい方は、ぜひ手元に置いてご活用ください。
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