グロリオサの心|そのいびつさのすべてが、私という命の本当の輪郭なのだ
何でもいいよと、いつものように相手に合わせる言葉を口にして、少しだけ息が浅くなる。
波風を立てないように、目立たないように、周囲の空気に自分の体温を馴染ませて生きる。そうしていれば誰も傷つかないし、自分も安全な場所にいられるから。
けれど、そうやって物分りのいい人間を演じるたびに、胸の奥に澱のような渇きが溜まっていく。
私の内側には、お行儀の悪いエゴと呼ばれるような、強いこだわりや、もっと上へ行きたいという熱量が確かに息づいている。私はその激しさを、わがままだ、もっと周りに溶け込まなければと、ずっと自分自身で抑え込み、責め続けていた。
そんなある日、スマートフォンの画面を何気なくスクロールしていたとき、一枚の花の写真が目に留まった。
名前は、グロリオサ。
その花は、葉の先にある細いひげを周囲に伸ばし、近くにある支えを借りながら上へと伸びていく。それは決して弱さではなく、貪欲に生き延びるための、その花なりの戦略だった。
それなのに、その内側には自分を守るための強い毒を秘めていて、咲くときには、それまで固く閉じていた花びらを、天に向かって大きくひっくり返すのだという。
画面に映るその姿を、私はしばらく、ただじっと見つめていた。部屋の静寂のなかで、その独特な花の姿が、胸の奥にかすかな波紋のように残り続けた。
その夜、ベッドに入って目を閉じたとき、昼間見たあの花の姿が、記憶の底からゆっくりと浮かんできた。
(……あ、そっか)
それは、張り詰めていた糸がふっと緩むような、静かな、本当にかすかな吐息のような納得だった。
私はずっと、誰の力も借りずに、完璧に自立して生きることだけが正しいと思い込んでいた。だから、他人に頼りたくなる自分も、自分のこだわりを譲れない頑固な自分も、全部直さなければいけない欠点だと否定していたのだ。
あの花は、誰かに寄り添う貪欲さも、自分を譲らない頑固さも、そのすべてを抱えたまま、ただ自分の内側にある熱量を信じて、あの形で咲いていた。不器用でも、いびつでも、自分の持っている性質を、何ひとつ否定せずに生きている。
その事実に触れたとき、長い間、自分を縛り付けていた透明な緊張が、氷が溶けるように少しずつ、静かにほどけていくのを感じた。
私は、誰かが作った完璧な型に、自分を当てはめる必要なんてなかったのだ。
誰かに頼る術を持っていてもいい。
どうしても譲れないプライドを持っていてもいい。
周りに合わせるのをやめて、自分のタイミングで、自分の情熱をそのまま外に出していい。
翌朝、何かが劇的に変わったわけではない。空はいつもと同じ色で、私はいつものように通勤の電車に乗っていた。
けれど、職場で自分の大切にしていた思いが、周囲の無難にいこうという意見に埋もれそうになったとき。いつもなら、まあ、いいかと諦めていた私の喉の奥が、静かに熱くなるのを感じた。
「私は、こうしてみたいです」
心臓がバクバクと音を立てて、声は怖いくらいに震えていたけれど、言葉はまっすぐに机の上に落ちた。周囲の顔色をうかがうのをやめ、自分の意志をそのまま、静かに差し出す。
私は、誰かに頼りながらでしか進めない一面もあるし、自分のこだわりを捨てきれない、めんどくさい人間だ。内側には、お行儀の悪いエゴも、誰の侵入も許さない冷たい毒も確かに飼っている。
でも、そのいびつさのすべてが、私という命の本当の輪郭なのだ。
もう、自分を偽って、縮こまって生きる必要はない。私はこの、愛おしくも不器用な自分のままで、私の熱量をそっと抱きしめて、ここから生きていく。

あなたがその不器用さに震えながら、
それでも譲れないものを抱えて立っているとき。
あなたはもう、あなたのままで、
どこまでも美しく咲いています。
🌸感謝🌸
いつも素敵なマガジンへ迎えてくださり、感謝しています。
私の紡いだ言葉が、新しい場所へと繋がり、また誰かの心に届くきっかけをいただけたこと、本当に嬉しいです。
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何度も迎えてくださり、ありがとうございます。
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どんな空の下でも、あなたはあなたらしく。
hanatoshiki
