百日紅の心|今日あった出来事が心に残っていたけれど、ずっと持ち続けなくてもいいのだろう
夕暮れ時、ぬるくなったお茶のカップを両手で包み込みながら、小さく息を吐き出す。
今日も一日、何事もなく終わった。誰かと笑い合い、自分の役割を果たし、滞りなく時間を重ねたはずだった。
けれど、部屋の明かりをつけた瞬間、肩の奥にずしりと目に見えない重みが残っていることに気づく。
嫌なことがあったわけではない。ただ、人と接する中で受け止めたささいな言葉や、相手の表情。そうした出来事が消えることなく、そっと心の中に留まってしまっているのだった。
ふと目を向けたベランダの向こうで、夕風に揺れるさるすべりが見える。
その樹木はどっしりと立ちながらも、どこか不思議なほど軽やかだ。
季節が巡る中で古い皮をそっと手放し、滑らかな木肌を見せている幹。夕立の雨粒も、吹き抜ける風も、留めることなくそのまま通り過ぎていく。
何かを抱え込むこともなく、ただ流れていくものを、流れていくままに。
枝の先を見上げれば、ブドウの房のように丸く膨らんだ小さな蕾たちが、互いに寄り添うようにして豊かに膨らんでいる。
今日咲いていた花が静かに枝を離れると、またひとつ、新しい蕾がふんわりとちりめん状の花びらをほどいていく。
焦ることも、誰かと比べることもなく、ただ内側から自然と満ちてきたタイミングで、そっと花開く。
一つひとつの小さな営みが折り重なって、ひとつの柔らかな景色をつくっている。
さるすべりを見つめていると、胸の奥で固まっていたものが、少しずつ解けていくのを感じる。
今日あった出来事が心に残っていたけれど、ずっと持ち続けなくてもいいのだろう。
さるすべりの幹のように、通り過ぎるものをただそのまま流していればいい。無理に払いのけようとしなくても、時間が経てば、出来事は静かに離れていく。
そして、枝の先の蕾のように、焦らず、私自身の内側から満ちてくるタイミングを、ただ優しく待てばいい。
深く吸い込んだ空気が、胸の奥までまっすぐに届く。
固くなっていた心がゆっくりと緩み、素直な自分に戻っていく。
明日もまた、私自身の穏やかなリズムで。
今日という一日を、夜の静けさの中へそっと手放していく。
🌸感謝🌸
いつも素敵なマガジンへ迎えてくださり、感謝しています。
私の紡いだ言葉が、新しい場所へと繋がり、また誰かの心に届くきっかけをいただけたこと、本当に嬉しいです。
🌸まちゃさん
🌸ぶどうスパークさん
何度も迎えてくださり、ありがとうございます。
🌸ふあふあころねさん
🌸ゆらり🌸🫧 🫶✨さん
再追加、ありがとうございます。
🌸ゆらさん
🌸真彦(梓Keni Nacastliのミラクルボーイズの片割れ)さん
🌸ボンちゃんさん
どんな空の下でも、あなたはあなたらしく。
hanatoshiki
