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いつでもどこにでも行けるように

9月8日(火)
8時起床。昨日干した洗濯物は、なかなか乾いていない。4日分の献立をじっくり考えてから、身支度をして出発。二日ぶりに外に出た。
電車に揺られてカメラのキタムラへ。パスポートと履歴書の両方に使える証明写真を撮りに来たのだ。これまでまったくと言っていいほど海外に興味がなかったので、パスポートを持っていなかった。それはお腹が弱かったり偏食だったりすることに由来しているのだけど、最近いろいろな人の話を聞くうちに、「いざとなれば、いつでもどこにでも行ける」というのはいいなと思ったのだ。
ChatGPTに聞いて背景色と混ざらないように黒い服で来たのだけど、証明写真の仕上がりはいまいちだった。ずっと自分の容姿や性格が好きになれない。でも、自分の書いている文章は好きでいられる。

近くのデパートに移動して、五右衛門に入った。何を頼んでもタコのペペロンチーノが頭にチラついてしまうので、今回は迷うことなく注文。唐辛子多めで、ピリリと舌が痺れる美味しさだった。

平日のデパートはマダムしかいなくて、時代が違えば私も「無職の人」ではなく「専業主婦」としてあの和に入れたのかなと思うと、少し憂鬱な気持ちに。うなだれながらエスカレーターを下りて本屋さんへ。ここの文芸担当の人が書く文章が好きなのだが、今回のPOPは特にピカイチだった。

フリーペーパー版には希死念慮についても書かれており、職場で配る紙に自身の希死念慮について書けるの、あまりにも良すぎるなと思った。
店内をウロウロしていたら小川哲の『屁理屈と哲学』を発見した。彼は最近、いろんなジャンルに挑戦しているなと思う。書けてしまうからというのもあると思うけど、思考実験をしているんだろうなと推察する。

最寄り駅でスーパーに寄る。私のキレートレモンや夫のコーヒー缶を買うとありえん量になるのだが、エコバッグを二刀流してなんとか持ち帰ることに成功。
PCを開いてnoteを書くことに。久しぶりに日記書いたら、なんだか暗くなってしまった。でも明るいエッセイより暗い日記のほうが反響がいい。それはなんとなく、わかる気がする。

明日、映画館に『スワロウテイル』のリバイバル上映を観に行くこともあり、同じく岩井俊二の『リリィ・シュシュのすべて』を今日は観てみることにした。ChatGPTには「自分を責める気持ちが強い日なら、刺激が強いかもしれない」と忠告された。でも、暗い気持ちの時に暗い作品を観たい人間もいるのよ、と思って再生する。

想像していたよりもずっと、いい意味で起承転結がはっきりしていなくて、こういう走馬灯的な映像が人気を博していることがなんだか不思議で、嬉しかった。
「田園風景の中で有線イヤホンをつけて音楽を聴く」ということがひとつの記号になってしまったのもわかるくらい、あまりにも映像が美しい。そしてリリィ・シュシュの神秘的な音楽にも中毒性がある。エンドロールに「小林武史」とあって、さすがだ…と思った。私が好きな音楽、だいたい小林武史が絡んでいる。
袋小路になってしまういじめの構図には、胸を締め付けられた。その背景にある大人の存在がもっともリアルで、急に妊娠・再婚する親のグロさとか、優しいけど助けてくれない担任とか、自分が見てきた光景のようにさえ感じてしまう。
みんなもはや演技に見えないくらい自然だったけど、蒼井優演じるクラスメイトのうっすらと生きることを諦めて感情を出している様子が、すごくよかった。

映画を観終える頃には、外は大雨になっていた。「雨のピークから少し時間をずらして帰る」と言った夫がびしょ濡れで帰ってきて、???となった。タオルと着替えを用意して、それを言われた通りに身に着ける夫を見ていると、お母さんと息子みたいだなと思う。
今夜は鶏肉とナスとピーマンのポン酢炒め丼、ほうれん草と玉ねぎと油揚げの味噌汁。夫はびしょ濡れで帰ってきて災難だったから、たまたま彼の好きなメニューでよかった。

彼は夜も仕事をするから、邪魔するのもよくないかと思って、食後はYouTubeを観て自分の世界に入り込んだ。最近また好きなYouTuberを一人見つけて、大切に観ている。こういう雨の日の夜にぴったりなトーン。紹介されていた千早茜の『男ともだち』、昔読んだけど再読したくなった。

お風呂から出て髪を乾かそうとしたら、夫にいきなりキスをされた。「梨乃ちゃんが僕にちょっかいを出してこないと、かえって心配になる」なんて、モテる受け身の人みたいなことを言う。
彼の仕事が終わったタイミングで、横に来てくれたから将来への不安をこぼした。三つ仕事に落ちてから仕事探しをする元気がなくなっていること、それから人生という膨大な時間の暇つぶしとして労働があるなら、フルタイムで働いた方がいいのか、でも暇つぶしで心身壊してもしょうがないよね、などと話した。
「僕は梨乃ちゃんが週3くらいで稼いでくれたら助かるけど、それ以上は求めていないし、なんなら働かなくてもいいよ」
夫はそういう神様みたいなことを言ってくれる。彼が二人分働いて、二人分稼いでくれているから、お金はそんなに必要ない。でも家賃がそれなりにかかるし、貯金や旅行のためにも少し働いた方がいいのも事実だ。

どの仕事をしても、自分の表現で活躍している人を見ると「そっち側に行きたい」と思ってしまっていたことも打ち明けた。なら私の場合、書く時間を確保できる生き方をしなければ、きっと何の仕事をしても同じ状態に陥るだろうと。
「仕事探しは休憩して、書くことに集中してみてもいいんじゃない?」夫がそう提案してくれた。

彼は優しいことを言ってくれているのに、漠然と将来が怖くて、泣いてしまった。
そんな私に夫はキスをして、「どう?僕のことまた好きになった?」と抱きしめながら聞いてくる。私が彼に依存しているのではなくて、彼が私を依存させている。

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