見出し画像

【小学校4年間が、人生を変えた話 第23話】 屋上ロープ事件

阿部先生は、

滅多に怒らない先生だった。

いつも笑っていた。

変なことばかり考えていた。

化石を掘りに行く。

川を作る。

新聞に載る。

そんな先生だった。

だから、

僕たちは先生が本気で怒る姿をほとんど知らなかった。

でも。

一度だけ。

教室の空気が凍りついた日がある。

ある友達がいた。

詳しい理由はもう覚えていない。

でも、

クラスの中で少し意地悪なことが続いていた。

今なら、

いじめと呼ばれるのかもしれない。

先生は何度も話していた。

何度も注意していた。

でも、

その日は違った。

阿部先生は静かに立ち上がった。

そして、

その子を連れて教室を出て行った。

教室は妙に静かだった。

普段怒らない先生だったからだ。

しばらくすると、

誰かが窓の外を見て言った。

「屋上だ…」

みんながざわついた。

後から聞いた話では、

先生は屋上でロープを持っていたらしい。

もちろん、

実際に吊るしたわけではない。

今なら間違いなく問題になると思う。

いや、

たぶん当時でも問題だったと思う😂

でも。

僕たちが覚えているのは、

ロープのことじゃない。

先生が本気だったことだ。

それまでの阿部先生は、

面白い先生だった。

楽しい先生だった。

でもあの日、

初めて知った。

この先生は、

人を傷つけることだけは許さないんだ。

本気で怒っているんだ。

ということを。

怖かった。

正直、

かなり怖かった。

でも不思議だった。

嫌いにはならなかった。

むしろ、

みんな少しだけ先生を見る目が変わった。

いつも笑っているだけじゃない。

ちゃんと見ている。

ちゃんと向き合っている。

そんな先生なんだと思った。

今振り返ると、

あのやり方が正しかったとは思わない。

でも。

あの日の先生の本気だけは、

今でも忘れられない。

子どもだった僕たちは、

まだ言葉にはできなかったけれど、

きっと感じていたんだと思う。

この先生、

本気で僕たちと向き合ってるんだな。

と。



▶ 次回 第24話

叱られ方で分かることがある

阿部先生はよく叱った。

でも、

なぜか嫌いにはならなかった。

それどころか、

叱られた後の方が先生を好きになることすらあった。

今思えば、

そこには大きな理由があった。

いいなと思ったら応援しよう!

fujisoba あなたの1つのチップが、次の1話を書く力になります。いつも読んでくれてありがとう✨