仲のいい姉弟の裏には、頼りない親がいる
娘と、二人で飲みに行ったときのことだ。
魚が好きで、日本酒が好きな娘。
ひとしきりどうでもいい話をしたあと、娘がこんなことを言った。
「同級生に、親の面倒を見なきゃって、学生のときから言ってる子がおるんよ」
「え、そうなの?なんで親の面倒みなきゃいけないとか思ってるの?」
今の時代にも、そんな風に言っている子たちがいるのが衝撃だった。
「なんや言ってもこの世の中、なんとでもなると思うよ。
子供がいない人だって、なんとかなってるんやから。」
そこまで言って、ひとつだけ思い出した。
「あ、あとひとつだけお願い。私が死んだら、お棺に入れるのと、お骨を海に撒くのだけしてくれる? ほら、それって自分でできないからさ。自分でお棺に入れないし、骨もまけないもん。」
「それくらいは全然やるよ。任せといて! お母さんがお骨拾う仕事しててくれて、ほんまよかったわ」
私がやってるの、お骨拾いっていう仕事じゃないし。
たまたま、拾うことになっただけだし。
私は成年後見人という仕事をしている。
認知症などでサポートが必要な方を援助する仕事で、期限はその方が亡くなるまで。
だから最後には、その人の死を迎えることになる。
見送った方は二十人を越えた。
何人もの方のお骨も拾った。
娘は、そのことを知っている。
私は、親子とか、夫婦とか、そういう枠に、そんなにとらわれなくてもよくない? と思っている。
好きなときに、好きな場所で、好きな人と一緒にいる。
家族も、その中の一つの関係なだけ。
無理に一緒にいる必要はない。
血が繋がってるのも何かの縁だから、お骨くらいは拾ってあげようか。
それくらいの、ゆるい感じ。
おもしろいのは、そのゆるさでいるほうが、かえって一緒に飲みに行けてしまうことだ。
その日、酔っぱらった娘がこんなことを言った。
「私ね、三人姉弟で生まれて、真ん中で本当によかったって思ってるんよ。お姉ちゃんは一番先に生まれて色々大変やったと思うし、弟は一応長男だし。
私は真ん中で、本当に自由にさせてもらえた。
あの二人と姉弟で、本当によかったって思ってるんよ」
「ちょっと。なによそれ。めっちゃ泣けるわ。だけどあれか。やっぱり頼りにならない親だったから、姉弟の結束が強まったとか、そういうことか。」
「うむ。それは否めまい……」
ちょっと・・・。苦笑
仲のいい姉弟の裏には、頼りない親がいる。
最近、自分が死んだ後のこと、つまり、自分ではできないことを、書き出してみている。
仕事では、亡くなった他人のために何度も動いてきた。
自分のこととなると、誰にしてもらおうか、何をしてもらったらいいのか、そのために何を伝えたらいいのか、手が止まる。
今思いついて、娘に頼んだのは、二つだった。
お棺に入れることと、お骨を撒くこと。
自分ではできないことだから、頼んだ。
あなたが亡くなった後、自分ではできないことは、なんでしょう。
