偏愛エッセイ・出不精のための白いレースのハンカチ
出不精の御守り(おまもり)
5歳くらいからでしょうか、この頃から出不精者だったのですから、筋金入りですね。大人になったはずの今でも億劫なものです。
そのため、外に出る楽しみをひとつ設けています。美しい小さなハンカチをバッグに入れておくこと。レディであるための御守りのように。
祖母とレディの象徴
小さい頃、祖母の箪笥からハンカチやスカーフ、扇子を取り出しては並べていた頃から、ハンカチは大好きでした。箪笥いっぱいに並んだ、触れると破れそうなほど薄いレースのハンカチ。しゃらしゃらと波が寄るような音が立つシルクのスカーフ。色とりどりの扇子たち…。
それに祖母の何とも言えぬよい香りが立ち込めていて、私にとってはレディの象徴でした。大人になったら、私も箪笥に美しい素敵なハンカチを並べるのだ…と、想像を膨らませては楽しんでおりました。祖母は一つ一つそっと取り出しては日に透かしながら「すみれちゃんって妙なこだわりがあるわよね〜」と微笑んでいました。完全に遺伝ですよね、コレ。
この思い出があるからこそ、今でも御守りとして真っ白なピンとしたハンカチと共に外出しているのです。

偏愛その1・よいハンカチ
私が個人的に考える、よいハンカチにはいくつか条件があって、まず、真っ白なこと。
演奏会や食事会の暗がりの中でもぼんやりと光るほどに白いもの。
そしてひときわ薄いこと。
あかりに透かせば向こう側が見えるほどに薄く、軽いものがよいのです。
私は新しいハンカチが手に入るとやさしく放り投げてみて、それがふわりと浮かび、ゆっくりと落ちていくか確かめます。
次に小さいこと。30センチほどの大きさであること。フフッ!そうです、何もできないサイズです。ただ美しさのために手にそっと握られるか、バッグの中にそっとしまわれている。それでよいのです。
実際に、私は必ずバッグの中にハンカチを入れておきますが、取り出すことすらせず帰宅することがほとんどです。
偏愛その2・結構テキト〜なお手入れ
お手入れは祖母に聞いた方法で行っています。
お鍋でお湯を沸かし、酸素系漂白剤と洗剤を混ぜ入れて煮込むこと。
祖母から受け継いだスイス製のレースも汕頭(スワトウ)も、さらに自分で刺繍したものや、日本のケミカルレースなども気にせず何度も煮込んでおりますが、これで特に傷んだ様子はありません。
お湯に入れた瞬間、ふわりと洗剤が香り、くすんだハンカチがすうっと真っ白な色に戻っていく瞬間はたまりません。
アイロンがけは次に楽しいことです。水気をとったハンカチを真四角にピンと伸ばします。
そして薄い当て布をして、じっくりとアイロンをあてます。
縁からアイロンをかけ、最後に中心へ進みます。中心からかけると、スイスレースは繊維が伸びて形が歪むから。汕頭刺繍のものは裏返し、毛足の長いタオルを下に敷きます。刺繍をつぶさないために。
自分で刺繍したものはスカラップがほつれやすいのでゆっくりとかけていきます。
これらは誰にも委ねたくない「私のお仕事」ですね。
そうしてできた真っ白でピンと張ったハンカチは、熱気をとり、香水をひと吹きしてハンキーケースに仕舞います。内側がキルティングになった、二つ折りの小さなケースです。
私のハンキーケースは薄桃色の、シルクのクッションでできているものです。これで綺麗なままハンカチを保管することができるのです。
お出かけの時にハンキーケースを開き、予定に相応しいハンカチを選びます。
これで、やっと外出する気持ちになります。出不精とは、げにおそろしきもの…。
けれど、なんの役にも立たない小さき存在が、ただ美しいからというだけで私を外に連れ出してくれるのです。その美しさの力によって。
あ、忘れてた…日頃の感謝を込めて
あらっ、実用的なハンカチですって?近沢レースのタオルハンカチ様です。今治産のタオル生地が頼もしく、日常を支えてくださいます。その隣で白いレースのハンカチがウフフッと微笑んでいるのです。

※お手入れ方法について、ハンカチの素材によっては適さない場合があります。私は自己責任で行っています。
偏愛シリーズ
祖母との思い出を繋ぐ、もう1つのアイテム。
スカーフ問答もどうぞ。
