あの頃の記憶を呼び覚ます・映画『リリイ・シュシュのすべて』
久しぶりに映画『リリイ・シュシュのすべて』(2001)を鑑賞。
2001年の作品だからもう25年前の作品。
前に見たのは20年ぐらい前だったけど、今回はまた違った視点で見れてすごく良かった。
今回はその感想をネタバレなしで書いていく。

あらすじ

田園が美しいある地方都市。14歳の蓮見雄一(市原隼人)は、かつての親友、星野(忍成修吾)にいじめられ、窒息しそうな毎日を送っている。唯一の救いはカリスマ的歌姫リリイ・シュシュの歌声だけ。自らが主宰するファンサイト「リリフィリア」の中にいるときだけが本当の自分でいられる瞬間だった…。
豪華な俳優陣

当時はそこまで有名じゃなかった
市原隼人、蒼井優、忍成修吾、高橋一生などが出演している。
無名だった人たちも今ではたくさん有名になっていて
岩井俊二の先見の明、すごいと思った。
そのほか、ちょい役でさえ
大沢たかおや稲森いずみなど
有名俳優陣たちもキャスティングされている。
それはさておき、この映画
見ていて本当に辛くなる映画の1つ。
なぜなのか考えていたら
あの頃の記憶を呼び覚ましてしまうからだと思った。
思春期

あの頃というのは、思春期。
12~17歳の間ぐらいの頃の記憶。
今思えば、学校に行ったりバイト行ったり、そんなことを繰り返すだけの毎日だったのに、なんであんなに辛かったのかわからない。
生きるのさえも辛く、苦しかった。
実際は今の方が責任もすることも多いのに思春期の方が生きていくのがすごく辛かった。
なぜなのか?
「すべてにおいて感性が研ぎ澄まされていた」から。
思春期、というよりも若い時は何を見ても聴いても新鮮で斬新。
感受性が豊かすぎてそれで苦しくなってしまう。
それでいて感情をコントロールすることが出来ない。
だからこの映画の14歳の少年たちはひたすら純粋で繊細、そして暴力的。感情に抗うことが出来ない。悲しさや辛さ、今いる地獄からどう抜け出せばいいのかがわからないからひたすら感情を爆発させていく。
「助けて」と言えない。
それが痛いほどわかるから見ていて切なくてたまらない。
あの頃にしか湧き出さない感情がスクリーンに映し出される。
大人になると鈍感になっていく

歳を重ねると新鮮だと思う事柄が減っていくからどんどん鈍感になっていく。大人になるということはそういうこと。でもいい部分もたくさんある。
思春期のようにどうしようもなく悲しくなったり希死念慮を抱えるようなことがなくなった。暗い部分しか見れなかったのに、光や明るいものも見えるようになって、生きるのが楽になる。
思春期が「剝き出しのカッターナイフ」なら大人は「カチッとロックされたカッターナイフ」だと思う。大人になると刃を完全に引っ込めて社会と調和を図っていける。
でも、思春期のような感情に戻れなくて寂しくなることもある。
そんな時にこの映画を見るとあの頃の記憶が蘇ってくる。
あの頃の記憶を呼び覚ます

映画の中でも、思春期の主人公たちは周りで起こるいろんな出来事や事件に翻弄されていく。当時社会問題になった事象までもが展開される。
思春期に経験したら、誰しもが同じようになってただろうと思えるような悲惨さだ。
とにかく見ていて辛くなる。どうすることもできない辛さ、切なさ。そこにあるのはどう考えても『地獄』。それがわかるから一気に思春期の記憶とリンクして辛くなる。だけどそれがもう、とてつもなく美しい。
もちろん、当時のような斬新さは思い出せない。
だけど当時感じていたことを客観的に見れるし、大人の視点で冷静にいろんなことを考えられてより深みを味わえた。
戻りたくても戻れない、あの頃を思い出せる素晴らしい映画だと思う。再鑑賞してよかった。
子どもだけ見える妖精の正体

感性の話でいえば、子どもは大人が見れない妖精や霊的なものが見れるという一種の都市伝説的なことがずっと昔からある。
本でも映画でも、ゲームでも。トトロとかその類?
その正体はきっと『鋭い感性』なのではないかと思っている。
それは大人になると見えなくなってしまうもの、失ってしまうもの。
痛みしかなくて辛いばかりの世界もその感性が見せる世界。
不安定な世界にいまでも子供たちはいる。
でもそれは大人には見えない神聖な世界だと思う。
そんな世界に少しでも戻れる作品を作ってくれた岩井俊二に感謝したい。
美しすぎるドビュッシー

劇中を流れるドビュッシーの楽曲がそれはそれは美しい。
少年たちの痛みをすべて包み込むようなピアノの音色が本当に素晴らしいので、ドビュッシーの曲も併せて味わえる作品となっているのもすごく良かった。
リリイ・シュシュのすべて

作品自体見ていると本当に辛くて悲しくなるシーンも多いけど、あの頃の記憶をたどって繊細な世界観にどっぷりと漬かりたいときにはおすすめの作品なのでまだ見たことない方、一度見て時間がたっている方におすすめ
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