柿の種うら面にいた「理想のふたり」
柿の種の小袋パックが好きです。
ポリポリ食べながら、パッケージに書かれたミニ知識を読む。
これが、私にとって至福の時間です。
日曜日の午後、いつものように袋の裏面に目をやると、見たことのない3コマ漫画がありました。
主人公は、柿の種とピーナッツ。

このふたり、夫婦なのでしょうか。それとも恋人同士でしょうか。
台所でお皿を洗いながら交わす会話。
ベランダで靴下を干しながら交わす会話。
そこに描かれているのは、どこの家にもありそうな、ごく普通の日常です。
ふたりには「なかよしルール」があるらしく、それがまた、ほのぼのします。
3コマなので、流れは「起・承・結」。
「転」がないのも、いい。
ただ、のんびりと話が進んで、最後にふわっと着地する。
いつもの会話があって、ちょっと笑って、一日が終わる。
そんな平和な時間を、柿の種とピーナッツのふたりが見せてくれます。

柿の種は、私がひとりじめできる唯一のお菓子です。
「唐辛子の味がするやろ」
そう言って夫は手を出しません。
唐辛子を食べると、どっと汗が噴き出す体質なのです。
だから私は、あえて柿の種を買います。
夫も負けてはいません。
「あー、“じゃがりこ”にしよ。お前に食べられんで済むからな」
そんなことを言いながら、私があまり食べないお菓子を選ぼうとします。
おたがいに考えていることは同じです。
「食べられてたまるか」
なのです。
仲良く分けあう?
そんな気は、さらさらありません。
ふたりとも、いい大人なのに、おやつとなると急に欲深くなります。
「これは私の」
「それはオレの」
油断すると寝ている間に食べつくされる。
リビングは常にピリついています。

取られる心配のない柿の種を、のんびり味わっていると、大袋にQRコードを発見。
この3コマ漫画のサイトが見られるようです。
「ぜんぶ読めるんだ!」
と喜んだのですが、なぜか途中で手を止めました。
なんだか、もったいないのです。
袋を手に持って、柿の種をポリポリ食べながら読む。
あの時間が楽しいから、私は袋で読みたい。

たまたま最初に開けた一袋は、ふたりの出会いを描いた「初回」の3コマでした。
視線が合わないまま、終わっていく感じにグッときます。
慎重にカッターで袋から切り取り、手帳に貼りました。
何年か経ったら、セロテープが変色しているかもしれません。

夫が見たら、きっとこう言うでしょう。
「とっとと捨てろやー」
だから、見せずにしまっておくことにします。
なかよし夫婦からは、ほど遠い私たちですが、
また買いに行きます、柿の種。
夫の好きなお菓子も忘れずに。
