(ゼミ学生投稿)クローゼットで眠る服はごみじゃない:衣類ロスと循環の未来(2期生 A. S. さん)
セールで安かったから買ったけれど、1~2回着ただけで、クローゼットの奥にしまい込んでいる服
みなさんのクローゼットにも、一着はあるのではないでしょうか。
私自身、クローゼットを見直したときに、まだ着られるのに、まったく出番がない服の多さに驚きました。流行や好みが変わった服もあれば、似たような服を買ってしまい、着る機会がなくなった服もあります。
私たちが何気なく手放している服は今や大きな社会問題になっています。
今回は衣類ロスの現状と企業の取り組みを調べ、私たち大学生にできることを考えました。
1.毎日、大型トラック約130台分の服が処分されている
「衣類ロス」とは、まだ着られる服や資源として再利用できる服がリユースやリサイクルにつながらず、処分されてしまう問題です。
環境省の2025年の推計によると、家庭から手放された服のうち、海外輸出を含めてリユースされる割合は35%、リサイクルされる割合は7%です。残りの58%は焼却や埋め立てなどによって処分されています。
処分される衣類は年間約46万トンです。一日当たりでは約1,300トンとなり、大型トラック約130台分に相当します。

政府は、家庭から廃棄される衣類の量を2030年までに2020年度比で25%減らす目標を掲げています。しかし、私たちが手放した服のうち、再利用や再資源化につながる服は、まだ半数に届いていません。
衣類は毎日の生活に欠かせない身近な存在です。服を買い、着て、手放す私たち全員が衣類ロスと無関係ではありません。
2.買うときと手放すときのギャップ
衣類ロスが発生する理由は1つではありません。
消費者側では、流行や好みが変わったことやサイズが合わなくなったことが服を手放すきっかけになります。着る機会が減った服もあれば、新しい服への買い替えや衝動買いによって着なくなる服もあります。
企業の生産・販売段階でも、需要予測と実際の販売数が合わず、売れ残りや過剰在庫が発生する場合があります。
SNSやECサイトが普及した現在では、スマートフォン一つで簡単に服を買えるようになりました。服を買うためのハードルが下がった一方で、着なくなった後のことを考える機会はあまり増えていません。
服を買うときに、数年後の使い道まで考える人は多くないでしょう。
衣類ロスを減らすには、捨てる場面だけを見るのではなく、買う、着る、手放すという服のライフサイクル全体を見直す必要があります。
3.衣類ロスが生み出す環境負荷
衣類ロスは、ごみの量だけの問題ではありません。
一着の服が作られるまでには、原材料の生産から生地の製造、染色、縫製、輸送まで、多くの工程があります。各工程では水やエネルギーが使われ、温室効果ガスや化学物質による環境負荷も発生します。
ほとんど着ていない服を捨てることは、服そのものだけでなく、服を作るために使われた資源やエネルギーまで無駄にすることにつながります。
大量の資源を使って服を作り、短期間しか着ないまま処分する一方通行の構造を変えなければなりません。衣類を使い捨てのごみとして扱うのではなく、もう一度利用できる資源として考える必要があります。
回収した量だけでなく、回収後にどのような形で再利用されたのかを確かめることが重要です。
4.衣類の循環に取り組む企業
衣類ロスの解決には、消費者の意識だけでなく、企業が衣類を循環させる仕組みを作ることも欠かせません。
現在では、不要になった衣類を回収し、リユースやリサイクルにつなげる企業が増えています。今回は、異なる方法で衣類の循環に取り組む三つの企業・ブランドを紹介します。
企業・ブランドアプローチ特徴JEPLAN「BRING」素材の再資源化ポリエステルを再生し、再び製品の原料として利用無印良品「ReMUJI」リユース・アップサイクル染め直しや洗い直し、リメイクによって新しい価値を生み出すアダストリア「Play Cycle!」回収・地域連携衣類回収に加えて、地域や学校と連携して衣類ロスについて発信
JEPLAN「BRING」――服から服を作る技術
株式会社JEPLANが展開する「BRING」は、さまざまなブランドや小売店と協力し、不要になった衣類や繊維製品を回収する取り組みです。

回収された衣類は選別され、まだ着られる衣類はリユースされます。リユースが難しい衣類についても、素材や状態に応じて再資源化されます。
選別されたポリエステル100%の衣類には、JEPLAN独自のケミカルリサイクル技術が使われます。ポリエステルを化学的に分解・精製し、再びポリエステル樹脂として利用できる状態に戻す技術です。
着なくなった服を回収し、素材として再生し、新しい製品にするという循環を、技術によって実現しようとしています。
消費者は協力店舗に不要な衣類を持っていくことで、衣類の循環に参加できます。企業が参加しやすい仕組みを用意している点に、この取り組みの大きな意味があると感じました。
無印良品「ReMUJI」――今ある服に新しい価値を与える
無印良品を展開する株式会社良品計画も、衣料品の回収やリユース、アップサイクルに取り組んでいます。
良品計画は2010年から衣料品を回収してきました。2025年3月からは、無印良品の資源循環に関する取り組みを「ReMUJI」と総称しています。
回収した衣料品のうち、まだ着られる服は染め直して「染めなおした服」として販売されます。染め直しが難しい服は洗い直して「洗いなおした服」として販売されます。

傷や汚れがあって、そのままでは販売しにくい服も、使える部分を別の服とつなぎ合わせ、つながる服として新しい商品に生まれ変わります。
古い服をそのまま再利用するだけではなく、今あるものに手を加えて新しい価値を生み出す考え方が、ReMUJIの特徴だと感じました。
「Play Cycle!」――地域や学校まで巻き込む
「GLOBAL WORK」や「niko and ...」などのブランドを展開するアダストリアを含むアンドエスティHDグループも、「Play Cycle!」という衣料品回収活動を続けています。
「Play Cycle!」は2016年に始まりました。回収された衣類は状態や素材によって選別され、一部は古着として販売されます。リユースが難しい服も、新しい服の原料や自動車の内装材などに再利用されています。
現在の公式ページによると、これまでに回収した衣類は累計212トン、約69万枚に達しています。
衣類を回収するだけで終わらない点も特徴です。出店先と協力した環境イベントや、近隣の学校で衣類廃棄について学ぶ授業も実施されています。
回収から再利用へつなげ、地域の人や学生に問題を伝え、次の行動を促す循環を作っている点に、「Play Cycle!」の社会的な意義があると考えます。
5.私たち大学生にできること
企業が衣類を循環させる仕組みを作る一方で、私たち消費者にもできることがあります。
最初の行動は、服を買う前に一度立ち止まることです。安いから、流行しているからという理由だけで決めず、本当に必要なのか、持っている服と合わせられるのか、何回くらい着るのかを考えます。
衣類ロスを減らしたいという意識を、実際の買い方につなげる必要があります。
次に大切なのは、一着を長く着ることです。組み合わせを変えれば、着る機会が減った服にも新しい出番が生まれるかもしれません。洗濯や保管方法に気をつけ、破れやほつれを修理すれば、服を使える期間も延ばせます。
服を手放すときには、ごみとして捨てる前に別の使い道を考えます。家族や友人に譲る方法もあれば、フリマアプリや古着店を利用する方法もあります。自治体や企業の衣類回収、支援団体への寄付も選択肢になります。
回収や寄付では、受け入れられる衣類や条件が決められている場合があります。利用前に条件と回収後の行き先を確認することも必要です。
「服を捨てない」と考えるだけでなく、「捨てる以外の選択肢を知っておくこと」が最初の一歩になるのではないでしょうか。
6.ゼミで衣類ロスに取り組むなら
衣類ロスについて調べる中で、大学生だからこそできる取り組みがあると考えました。
最初に、大学生を対象とした匿名アンケートを実施します。一年間に購入する服の数や、服を買うときに重視する点を質問します。着なくなった服の行き先、古着やフリマアプリの利用経験、衣類回収の認知度も調べます。
アンケートによって大学生の行動を把握した後は、学内で衣類回収を行うことも考えられます。
期間限定の回収場所を大学内に設け、企業や自治体がすでに運営している回収・リユース・リサイクルの仕組みと連携する方法です。状態のよい服については、学生同士の交換会を先に行い、次に着る人を学内で見つける取り組みも考えられます。
活動を評価するときには、「何キログラムの衣類が集まったか」だけを成果にしてはいけません。回収後に何着がリユースされ、何着が素材として再利用され、どの程度が処分されたのかまで確認する必要があります。
アンケートや回収活動で分かったことは、noteやSNSを通じて発信できます。「着なくなった服を捨てる前にできること」をまとめれば、ほかの学生が行動を始めるきっかけにもなります。
「実態を調べ、行動し、結果を伝える」という流れを作ることができれば、衣類ロスについて知るだけでなく、実際に行動する人を増やすことにもつながると思います。
おわりに
衣類ロスは遠い場所で起きている問題ではありません。
毎朝開けるクローゼットの中にも、衣類ロスにつながる服があるかもしれません。
誰もが服を一着も捨てない完璧な生活を目指す必要はありません。
必要な服を考えて買う。できるだけ長く着る。手放すときは、次の使い道を考える。
大切なのは毎日の小さな行動です。
企業も回収した服を新しい素材に生まれ変わらせたり、古着として再利用したり、地域や学校と協力したりしながら、衣類の循環に取り組んでいます。
企業が作る仕組みと、私たち一人ひとりの行動がつながれば、衣類を「使って、捨てる」だけではなく、「使う、手放す、もう一度使う」という循環を広げられるのではないでしょうか。
まずは今日、クローゼットからしばらく着ていない服を一着取り出し、次の行き先を考えることから始めてみませんか。
参考文献・参考資料
環境省「サステナブルファッションとは」
BRING「服の回収」
株式会社良品計画「資源循環」
無印良品「ReMUJI 資源回収」
株式会社アンドエスティHD「ファッションロスのない世界」
株式会社アンドエスティHD「Play Cycle!」

