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できる人に任せるほど開発が止まる



スピードを優先するほど、チームの動きは鈍くなる

スタートアップや成長フェーズの現場では、「一番できる人に任せた方が早い」という判断がよく行われます。
確かに短期的には最も合理的かもしれません。経験も豊富で、修正の手戻りも少ない。
しかし、この最速の判断こそが、長期的にはチーム全体のスピードを落とす要因になっていることは少なくありません。

例えば、特定のメンバーにタスクが集中すると、タスク間の依存関係のために、他のメンバーはその人の作業が終わるまで待機することもあります。
その瞬間だけを見れば最速で進んでいるように感じられますが、チーム全体で見ると実際の進捗は止まってしまっています。

この例は極端ですが、こうした形でリソースの偏りが続くと、スキル差や担当領域の偏りが固定化し、結果的に「早く動いているようで進んでいない」状態に陥ります。
属人化は、こうした最適だと思って選んだ判断の積み重ねの中で静かに進行していくのではないかと思います。


「前回担当者が一番早い」という判断が生む非効率

「前回その機能を担当した人が一番早い」という判断も、現場で頻繁に行われます。
確かに短期的なスピードは出ますが、その裏ではチームの学習機会が失われているという側面もあります。
他のメンバーが新しい領域に挑戦できないまま、知識が一部に偏り、結果として属人化が進みやすくなるのです。

また、別の人が担当する場合には、コードの読み込みや影響範囲の確認といったオーバーヘッドが発生します。
こうした非効率を避けたいがために、結果的に再び同じ人に依頼する流れになります。
この短期的な最適化の連鎖が、チーム全体の成長速度を少しずつ鈍らせていきます。


スピードの裏で進行する見えない遅延

短期成果を重視するフェーズでは、リリースを最優先に動くことが多いです。
しかし上述した通り、同じ人が同じ領域を繰り返し担当すると、他のメンバーがコードや設計を理解する機会を失い、
いざ引き継ぎや障害対応が必要になった際に、想定外の遅延が発生します。

このような見えない遅延は、属人化が進んでいるサインといえます。
さらに、同じ作業ばかり続けるエンジニア本人のモチベーションも下がってしまったり、
「慣れ」からくる油断によって品質が低下することもあります。
スピードを追い求めるあまり、結果的にチーム全体の柔軟性と生産性を奪ってしまうのです。


属人化は構造で生まれる

属人化は、個人の努力やスキル不足の問題ではなく、タスク配分の構造的な問題や、情報共有の仕組みが出来ていないなどが原因かと考えています。
リリースやトラブル対応など、スピードを求められる場面では、“最速の手”を選びがちです。
その時の判断としては正しくても、それが常態化すると知識が一部に集まり、組織が脆くなります。

重要なのは、「誰が最速か」ではなく、「誰でも動ける状態をどう作るか」という設計です。
開発の属人化を防ぐには、ドキュメント整備やコードレビューを仕組みに組み込み、
知識をチーム全体に拡散させるプロセスを設計する必要があるのではないかと思います。


スピードと効率を両立させるために

上述した通り、属人化の原因の1つとして、「短期的な合理性の積み重ね」があります。
一見スムーズに進んでいるように見える組織ほど、将来的な停滞リスクを抱えています。
スピードを出すことと、再現性のあるチームを作ることは対立しません。

リリース期には即応性を優先し、落ち着いたフェーズで知識を共有するなど、
スピードと分散をバランスさせるマネジメント設計が必要です。
属人化を現場の問題として片付けず、経営と組織デザインの課題として扱うこと。
それが、持続的な開発スピードを保つための第一歩なのではないかと思います。


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本記事は、プロフィットメイカーズの坂口が執筆する「言葉にするCTO思考」シリーズの一編です。
元CTOとしての経験をもとに、プロダクト開発の現場で日々向き合ってきた
“経営と技術のあいだ”にある思考や判断を、言葉にして綴っています。

・開発チームがなぜ動かないのか。
・何を優先すれば、事業が前に進むのか。
・CTOがそばにいないとき、どう考えればいいのか。

そんな問いに向き合う、ビジネスサイド出身の経営者の方々や、
日々、開発をリードするCTO・PdMの方にとっての一助となれば幸いです。


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