カツ丼は食える時に食え #1000文字日記
都内の友人が服を買いに新宿に行くというので、同行した。控えめで遠慮がちな性格の友人に、絶対袖を通してみたほうがいいからと試着を勧め、結果としてサイズも着心地も満足のいく服を購入できたようで良かった。
私より数歳年上のその友人が、食べるのが大好きなことはよく知っていた。だから、このあとご飯でも行こうとなったので、唐揚げやとんかつなどの肉料理がメインのお店を提案してみたのだけど、なんだか反応が渋い。
詳しく聞いてみると、最近揚げ物を食べると必ずといっていいほど胃腸の調子が悪くなるから避けているとのこと。天ぷらもダメなのだそうだ。
そりゃ、身体の健康を考えたら、揚げ物は控えた方がいいのは明白だ。だけど、選択肢の中で食べないことを選ぶのと、食べたくても食べられないのはまったく別物である。あの美味しい揚げ物たちを体調のために食べられなくなったという事実を聞いて、私は少なからずショックを受けた。
その日は結局、魚料理のお店に行った。別の誰かにも紹介したくなるような美味しいお店だった。
友人の境遇は、まるで自分ごとのようにその後じわじわと心に残った。
年を重ねるたびに、心身は確実に変化していく。はっきりと言えば、衰えていく。
「足るを知る」という考え方も好きだけど、これまで普通にできていたことができなくなる悲しみは、生き物である限り避けて通れないのだと思い知らされる。
数日後、自宅でお昼にカツ丼を作って食べた。
美味しかったし、私の胃腸は変わらず元気であることも分かった。幸せなことだ。
どこかの著名な誰かも、何かの媒体で言ってたか書いてた気がする。年を取ると揚げ物が食べられなくなると。
どこか他人事だと思っていた話が、友人の境遇を通して急に身近に感じられるようになった。当たり前はいつか当たり前でなくなるし、後悔のない人生とは大きな夢や壮大なロマンではなく何気ない日常の中にこそ点在している。
今回の件は、1つの教訓をくれた。
カツ丼が好きなら、食べられるうちに食べておいた方がいい。
終
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