選べないほど、選べなくなる――心の羅針盤10
ドラッグストアで、柔軟剤のサンプルを一通り嗅ぐ。 でも、決められない。 だから、全種類買う。
家に帰って、一つずつ試してみる。 それでも、一番好きな香りは決まらない。 次に買うときも、また全種類買う。
これって、選ぶのが苦手なのか、 それともただの無駄遣いなのか、自分でもよくわからずにいた。
でも最近、似たようなことを別の場面でもやっていた。
To-Doを管理するアプリがしっくりこなくて、新しいのを探していたとき。 MindNode、Freeform、Xmind、Miro、Milanote。 一つ調べるたびに、また別の候補が出てくる。 気づけば、比較しているだけで一時間過ぎていて、 結局、どれも一回も使わなかった。
柔軟剤のときは「全部買う」。 アプリ探しのときは「一つも選ばない」。 真逆に見えて、やっていることは同じだった。
選ぶというのは、他のものを諦めるということでもある。 その「諦める」のが、地味に嫌なんだと思う。 だから、全部持っておくか、一つも決めないか。 どちらかの形で、選ぶこと自体から逃げていた。
アプリ探しの方は、「パソコンでもスマホでも使えること」の 一点だけに条件を絞ったら、やっと一つに決められた。 条件を減らしたら、迷いも一緒に減った。
柔軟剤の方は、まだ解決していない。 もしかして、そのうち選ぶのが面倒になって、 無香料のものにしてしまうかもしれない(笑)
でも、それも一つの答えかもしれない、と思う話を思い出した。 スティーブ・ジョブズの黒のタートルネック。 マーク・ザッカーバーグのグレーのTシャツ。 ジェンスン・ファンの、黒の革ジャン。 みんな同じ服を何枚も持っていて、毎日同じものを着ている。
人は1日に、およそ3万5000回もの選択をしているらしい。 その一つひとつに、少しずつwillpowerが使われている。 だとしたら、服のような「どうでもいい選択」を一つ減らすだけでも、 そのwillpowerを、もっと大事なことのために残せるはずだ。 スティーブも、マークも、ジェンスンも、 きっとそれをわかっていたから、毎日の服選びをやめたんだと思う。
その考え方には、かなり賛成できる。 職場にも制服があれば、と正直思う。 断捨離をするとき、一番手放しやすいのはいつも服だった。
毎日選ばなくていいように、先に一つに決めておく。 柔軟剤も、いつか「もうこれでいい」と決めてしまえる日が来るのかもしれない。
これは、選ぶのが苦手なだけじゃなくて、 諦めるのが苦手なだけかもしれない。 そう気づけたのは、収穫だった。
完璧な一つを探し続けるより、 まあまあの一つを選んで、あとから直していく方が、結果的に早い。
これも、まだ本当にそうかはわからない。 それでも、選ぶのに疲れたときは、 「今、選ばなくていいものまで選ぼうとしていないか」と、 一度自分に聞いてみようと思う。
木漏れ日は、選び抜いた完璧な瞬間には差し込まない。 力を抜いた隙間から、勝手に差し込んでくる。 選ぶことも、たぶん同じだった。
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