充実有る最後の一時間
今日は、本業の仕事が休みの為、私は単発派遣の仕事を入れる。
派遣会社に向かわされたのは、東京の城東に在る、昭和に建てられたのは間違い無いであろう、歴史を感じる白い外壁を持った倉庫であった。扱っている商材は化粧品である。
九時半から十七時まで働く事になっている。最後の一時間は、充実感を持って仕事に取り組む事が出来た。
商材のパッケージに、バーコードを貼り付ける作業をする様に指示を受け、私は鈴谷マオという女性と隣になり、商材やバーコードを共有する事になった。
初対面であったが、鈴谷さんと言葉の往来が繰り広げられる程に至れたのだ。それは、彼女が絡み易い人だからなのと、私がちゃんと応じる事をしたからだろう。
「おにいさんは、何処から来ているの?」
「新宿区からですよ。」
「えー⁉︎ 凄いわね。バリバリの都心で暮らしてるなんて。」
「鈴谷さんこそ、どちらから御出で。」
「アタシは、ここから歩いて十分の所に住んでるわ。」
「良いじゃないですか。凄い近くて。」
私達の会話は、いつしか深さを伴った域へと流れいく…。
「それにしても、人間は機械任せにして、ラクをしようとするから、可笑しくなって了うのよ。それと、効率化ばかりを追い求めてばっかりで…。」
鈴谷さんは、常に胸に抱えているかもしれない事を、発して来た。会話を始めた時とは、違う空気が感じ取れ、表情が見受けられる。
「そうですね。矢張り、各人が頭を絞り、身体を動かさないといけないと思いますよ。」
私は、思っている事をそのまま返す。加えて、
「例えAIが、北へ行けと示しても、自身で考えた末に南だと思ったなら、自分の決断に従って南へ向かう事が、大切なのではないでしょうか?」
と述べて見た。
軈て、勤務が終わる時間が訪れ、私達はお別れである。
鈴谷さんと会話が出来たので、私は充実感に浸って今日の仕事を終える事が出来た。
彼女は、娘がいると話してくれた。ああいう話を出すのは、子どもという未来を託す存在を持つが故なのだろうかと私は思った。 完
