函館ストーリー
「秋風のチャチャ登りで、想い出がそよぐ」
チャチャ登りから、函館聖ヨハネ教会へと続く石畳が好き。
その坂道は、秋になると少しだけ色を変える。
風が冷たくなり、影が長く伸び、 石畳の上に落ちる光がどこか寂しげになる。
私はポケットの中で咲いていた、 彼との想い出を風の中で散りばめた。
ひらひらと、想い出が枯葉と一緒に舞い上がる。
風が吹くたびに、 胸の奥で何かがそっとほどけていく。
忘れたくないのに、 秋の風は優しくて、少しだけ残酷だ。
ポプラの梢には風が駆け抜け、 薄紅色がそよぎだす。
落ち葉が、足元を走り抜ける。
その音は、まるで誰かが急いで駆け寄ってくるようで、 思わず振り返ってしまう。
でも、そこには誰もいない。
道には、もの思わしげなコスモスが、 そっと風に揺れていた。
「そんなに見つめないで!」
私は、涙声でコスモスにそっとつぶやいた。
まるで、コスモスが私の心の奥を すべて知っているかのようだった。
秋の函館は、 風も、光も、花も、 どれも優しく寄り添ってくる。
だからこそ、 胸の奥の痛みが、 静かに浮かび上がってしまうのだ。
あとがき
今回の函館ストーリーは、 秋の風景と心の揺れを重ねた短い物語です。
秋は、 過ぎていく季節の気配と、 ふとした寂しさが胸に触れる時期でもあります。
チャチャ登りや聖ヨハネ教会の周辺は、 秋になると光の色が変わり、 風が少し冷たくなり、 街全体が“静かな物語”を語り始めます。
その中で、 想い出が風に舞うような感覚や、 花に心を見透かされるような瞬間は、 誰にでも訪れるものです。
秋の函館の空気を感じながら、 この物語を読んでいただけたら嬉しく思います。
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!