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「エースが折れた日」

うちのエースはまだ若い。

シュッとしていて、
真面目で、
要領もいい。

しかもルックスまで悪くない。

たまに自分のことを
「お父さん」
って呼んでくる。

実際は、
自分の方がエースのお父さんより年上らしい。笑

エースは、
元パン屋さん。

探究心もあるし、
飲み込みも早い。

正直、
欠点が見当たらない。

この前の球技大会はボーリングだった。

本人は
「苦手だから見学したい」
って言っていた。

でも自分は、
「出なさい」
って言った。

無理強いするつもりはなかった。

でも先生が参加者を募った時、
エースはこっちをチラッと見て、
静かに手を挙げた。

今どきの子なのに、
そういうところがいい。

結果はというと、
カビゴンといい勝負だった。

はっきり言って、
めちゃくちゃカッコ悪かった。笑

でも、
そこがまた憎めない。

やっと見つけた欠点なのに、
逆に好感度を上げてくる。

ズルいやつだと思う。

今日、
そんなエースを見て感心したことがあった。

実習で、
誰よりも早く
曲げ検査に挑戦した。

材料の数には限りがある。

だからみんな、
なるべく練習してから本番に行きたい。

でもエースは、
一回目の溶接でそのまま検査へ行った。

理由を聞くと、

「試験に一番近い状態でやりたかったから」

と言った。

確かに。

わかっていても、
自分は貧乏性だから、
切っては繋げ、
切っては繋げを繰り返してしまう。

みんな、
エースは通ると思っていた。

ビードも綺麗だし、
仕上がりも一番上手い。

あれで落ちたら、
誰が受かるんだってレベルだった。

でも結果は、
不合格。

みんな信じられなかった。

エース本人も、
信じられない顔をしていた。

でもそのあと、
自分がどこで失敗したか、
何が足りなかったかを、
声を詰まらせながら、
クラスメイトに説明してくれた。

落ち込んでいた。

でも、
すごくカッコ良かった。

これは余談だけど、
自分は先生より、
エースのアドバイスを参考にする時がある。

同じスタートラインだから。

先生は上手すぎて、
分からない人の感覚がもう分からないことがある。

でもエースは、
「何で躓くか」
を理解している。

だから説明が入ってきやすい。

たぶん、
今の自分の上達は、
エースのお陰だと思う。

エースの挫折が、
自分の糧になっている。

息子くらい歳の離れたクラスメイトだけど、
いつも感謝している。

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