「最期はみんな一人なんだから」という励ましが、独身の私をモヤモヤさせた理由
「結局みんな同じ」であるはずがない
独身生活が長くなってきたり、年齢を重ねたりする中で、ふと将来への孤独や不安を口にしたとき。
既婚の友人や両親、会社の同僚などから、こんな風に声をかけられた経験はないだろうか。
「でも、最期はみんな一人だから。結婚しても、しなくても一緒だよ」
「死ぬ時は一人なんだから、結局みんな同じだよ」
相手に悪気がないことは分かっている。むしろ、婚活が上手くいかない私に、「結婚だけが人生ではない」「独身でも大丈夫」と伝えたかったのだろう。
それでも、私はこう思ってしまう。
「独身の私を、一緒にしないでほしい」と。
既婚と独身は同じ立場ではないはずなのに、なぜ「結局は同じ」に集約されてしまうのだろう。配偶者がいる人、あるいは離婚していても子どもがいる人から、「結婚しても、しなくても変わらない」と言われることに、どこか釈然としない思いがあった。
12年婚活して、42歳で結婚した今なら、何にどう納得いかなかったのかがはっきりと分かる。「最期は一人」であることと、「そこに至るまで一人で生きる」ことは、まったく別の話なのだ。
「死ぬ瞬間」と「そこまでの人生」は別である
確かに、人は死ぬときにはみな一人なのかもしれない。夫婦だからといって、同じ日に同じ瞬間に亡くなるわけではない。多くの場合、どちらかが先に亡くなり、残された側は一人になる。
子どもがいても、必ず最期を看取ってもらえるとは限らない。子どものほうが先に亡くなる可能性もあれば、親子関係が悪くなって疎遠になることもある。遠方で暮らしていれば、死に目に間に合わないこともある。
私自身、結婚はしたが、不妊治療をしても子どもは授からなかった。夫が先に亡くなれば、老後は一人になる可能性がある。
私は一人っ子であるし、親戚付き合いも密ではなく、友人も少ない。だからこそ、「結婚しても、しなくても一緒だよ」という言葉は、ある意味正しいようにも思える。
ただし、死ぬ瞬間に一人である可能性があるからといって、既婚者と独身者の人生が同じになるわけではない。
たとえば85歳で亡くなるとして、80歳まで夫婦で暮らし、その後の5年間だけを一人で生きる人もいる。一方で、18歳で実家を出てから85歳まで、67年間を一人で暮らし続ける人もいる。
どちらも「最期は一人」だ。しかし、そこに至るまでに過ごした時間はまったく違う。
死ぬ瞬間という「点」だけを見れば、似ているように見えるかもしれない。しかし、そこに至るまでの何十年という日々を、一人で生きることとパートナーと分かち合うことの間には、生活面の負担も、経済的な負担も、精神的な負担も、大きな差がある。
その何十年という「線」を無視して、「最期はみんな一人だから」と一緒くたに語るのは、あまりにも乱暴ではないだろうか。
独身者が求めているのは看取りの瞬間だけではない
独身者が結婚を望む理由は、「老後に看取ってくれる人がほしいから」だけではない。
むしろ、死ぬ瞬間に重きを置いているのではなく、「最期を迎えるまでの日常を、誰かと生きたいから」ではないだろうか。
美味しいものを食べて、「美味しいね」と言い合うこと。
毎日、「ただいま」「おかえり」を交わせること。
今日あった些細な出来事を報告し合えること。
体調を崩したとき、「ポカリスエット買ってきたよ」と声を掛け合うこと。
そして、同じ季節を何度も一緒に迎えること。
結婚生活の大半を占めるのは、看取りの場面ではない。こうした何でもない日常の連続だ。その日常を「誰かと共有してみたい」と願うからこそ、これから先の何十年を、一人で生きていくかもしれない将来に、孤独や不安を感じるのである。
なぜ既婚者の一言が、余計に引っかかるのか
このモヤモヤがさらに大きくなるのは、それを言っている相手の多くが既婚者だからである。「最期はみんな一人だから」と励ましてくれる既婚者には、今、一緒に暮らす配偶者や子どもといった家族がいる。
家に帰れば誰かがいる。
今日あったことを話す相手がいる。
体調を崩せば、気にかけてもらえるかもしれない。
困ったことがあれば、一緒に考えてもらえる可能性がある。
もちろん、すべての夫婦が仲良く支え合っているわけではない。
それでも、配偶者との日常を持っている側から、「結婚しても、しなくても一緒だよ」と言われると、結婚によって得たものを手放さないまま、その価値だけを小さく語っているように聞こえてしまう。
「本当に同じなら、あなたの配偶者が明日いなくなっても、生活は何も変わらないのだろうか」
独身だった私は、心のどこかでそう感じていたのだと思う。
結婚した今、同じ言葉を口にしそうになっても
そんな私も今は、独身の知人から「結婚したいけど、相手が見つからないんだよね」と聞かされる側になった。
そんなとき、「私だって結婚したって言っても子どもはいないし、一人っ子だし、最期は一人だよ」と、思わず口にしそうになる瞬間がある。
けれども、その言葉をぐっと飲み込む。独身者が抱える不安を、私自身が痛いほど知っているからだ。
今の私にも、夫を亡くして一人になる不安は常に頭の片隅にある。しかし、それは独身だった頃に抱えていた不安と、完全に同じではない。
最期に一人になるかもしれないけれど、その日まで夫と過ごせる可能性がある。「この先ずっと一人かもしれない」と毎晩寝る前に考えていた独身時代と今の私とでは、置かれている状況が違うのだ。
今の私も、独身だった頃の気持ちはよく分かっているつもりだ。けれども、立場が違えば、相手の不安を完全に理解できないのは当然なのかもしれない。だからこそ、分かったつもりになって「結婚しても、しなくても同じ」と一緒くたにしないことだけは、忘れないでいたい。
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※2026年8月9日に執筆・公開しました。
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