私の東京ガイド遍歴|ルート⑩ 赤坂~六本木
東京でウォーキングコースを作るにあたって最初に頭に浮かんだのが「鬼門」という風水の考えでした。古来から鬼が入ってくる不吉な方角とされた北東の鬼門、対して鬼が出ていく方角とされた反対側、南西の裏鬼門。江戸時代にはそれぞれの方角に寺社仏閣を配することで、こうした邪気から都市を守ることができると考えられてきました。
北東の上野寛永寺(鬼門)からスタートして、最後に南西の日枝神社(裏鬼門)、そして現代のランドマークとして東京タワーをゴールにしたら面白いんじゃないか。そんなことを考えたんです。この構想は荒俣宏氏の小説、「帝都物語」から勝手にインスピレーションを受けたものです。風水と都市のミステリアスな関係がとても刺激的に描かれた作品で、英語タイトルは"Doomed Megalopolis"、ダークな感じがたまりません。
さて、自ら始めた物語のゴールにははたしてどんな景色が待っているのか、いよいよ最終回です!
ルート⑩ 赤坂~六本木

◯首相官邸
集合場所は首相官邸の真裏にあたる溜池山王駅。はじめて官邸をまじまじと見た気がします。土日なので人通りは少ないですが、警察官が配備されていて物々しい雰囲気です。
「実は職場が近くなんだけど、いつもは駅からオフィスへ行くだけで、じっくり歩いたことがないんです、だから参加してみました。」
この日はそんなゲストが複数名いらっしゃいました。
溜池山王というだけあって江戸時代の古地図を見るとそこにはおおきな溜池が載っています。そこからまっすぐ東に進むと東京湾に繋がっていて、そこには海水が入らないように調整していた水門がありました。名前からもわかるのですが、その場所こそ汐留です。潮を止めていた場所、というわけです。地名って面白い!こんな感じで要所要所で古地図をiPadで広げて話のネタに使いながら、実際の場所に立って地名の由来を紹介しました。
◯日枝神社



3月の日枝神社では梅が咲いていました。ツアーを立ち上げたのが1年前の桜咲き誇る4月。ついに季節が一周して最終回、感慨深いです。
◯ホテルニューオータニ
ホテルの敷地には入っていませんが、古地図を使い遠くから案内。かつて井伊家の大名屋敷だったことが良く分かります。さらにその隣には赤坂御門が。これが赤坂見附の由来になった場所です。文字だけで「それ」とか「あれ」とか書いてもいまいち伝えづらくて残念。
でも、だからこそ街を歩きながら古地図アプリを開く楽しさと発見があるということです。
◯豊川稲荷東京別院

提灯には有名人の名前がたくさん書いてありました。芸能人も良く訪れる寺院だそうです。書いていて、寺院だっけ?神社だっけ?となりました。稲荷だから神社だろうと思ったら違った。神仏習合ややこしい・・・。
赤坂にはTBSや博報堂などメディア関係の拠点が多いです。
◯とらや赤坂店

モダンな佇まいの店舗。下見の時に買った斬月という和菓子がとてもおいしくてまた買ってしまいました。カフェスペースもあるのですが、ウォーキングツアーの途中で一度まったりしてしまうと、再出発のタイミングが難しくなるので残念ながら割愛で。このあたりの運営は初回のツアーで学びました。
◯志の門(武家屋敷門)

元々は現在の丸の内、KITTEのあたりにあった武家屋敷の門だそうです。その後、何度も場所を移し変えて、2016年にこの場所に移築されたのだとか。こんな大きなもの、移築なんてできるんですね。
◯檜町公園(東京ミッドタウン)
タワマンの脇に伸びた緑道を通って六本木方面までやってきました。途中の道も高低差が大きくて、さながら都市の中のハイキングと言った感じです。このあたりもどこも古地図を見れば大名屋敷だった所ばかりです。大使館が多いエリアだからか、六本木あたりまでくると急に道行く人たちがグローバルな雰囲気になってきます。

ゲスト:「赤坂からここ(六本木)まで歩いてこれるなんて!」
街を歩けば、そういう何気ない発見や体験もあるものです。東京に住んでいても多くの人は普段電車を使って職場と自宅の往復しかしないのではないでしょうか。歩くとしても商業施設なり目的地周辺だけで、町と町の間というのはわざわざ歩かない。実はそういう所にちょっとした発見とか冒険の感覚があったりします。そして話しながらだと意外とあっという間なんです。
なので「ここはかつての◯◯跡地で~」みたいな説明チックの話しは後半の回ほど最小限にしました。聞かれたらもちろん準備してきた限りのことは答えますが。それよりみんながしたい話があるならしたらいいんです。ここはあくまでウォーキングツアー、一緒に歩くというシンプルな行為こそ醍醐味なんです。
◯毛利庭園(六本木ヒルズ)

最後にこの六本木ヒルズにたどり着き、隙間から東京タワーを望んだ時、人知れず感慨がこみ上げてきました。ついに自分が目指してきた東京を歩き切ったぞと。

こちらは下見の際に持ってきたカメラで撮影した東京タワー。ガイドの際は当然自分が先頭を歩いているし、iPadで古地図を見せたり、話をしているので活動中の写真を撮る余裕はぜんぜんありませんでした。ゲストとの記念撮影はプライバシー配慮で載せられないので、結果的に風景写真ばかりではありますが、とにかく活動記録としてこうして形にできたのは良かったです。
こうして写真を貼りながら一年前の記憶を文字に起こしてみて、ウォーキングツアーの面白さは言葉ではとても表現できないと感じました。動きの中で、環境の中でこそ会話が弾み景色の共有があり、体験が生まれるもの。ブログ形式の静的な写真と文章ではまったくライブ感はないし、だからこそツアーをやることに意味があるんだなと気づけました。
ガイドとは言っても説明することが本旨ではなく、一緒に歩いて発見すること、共有すること、交流することがメインなんだと気づきました。
それは自らの語学の為でもあったし、広くは表現力を磨きたいというビジョン、そして何より新しい景色を見たかったからです。
