〚お客をえらぶギター奏者の物語(仮題)〛通し番号101. 《歩み出す》(25)

マヤが 呼ばれて来た。
まだ 顔色は ひどく悪い。
腫れぼったい目も 前髪では隠しきれていない。

世話役が「私は 席を外しましょうか?」
「いえ、同席をお願いします」
世話役は マヤの肩を抱くように 椅子に座らせ、白湯を汲んで渡した。
「少しだけでも お飲みなさい」
マヤが 素直に ひと口すすったところで、親方は 口を開いた。

「気分はどうだ? 大丈夫か?」
「ハイ、スミマセン」
「お子さんの具合は?」
「サイアクの時は 過ぎました、よく 眠ってイマス」
「そうか、早く回復するといいな」
「アリガトウゴザイマス」
「マヤも 大変だったな。お子さんの顔を見に 帰ったらどうだ?」
それは いたわりの語りかけだったが、マヤは ワッと泣き伏し
「親方、私はクビに ナリマスカ?」
親方は 痛ましげに目を伏せ、
「いや、そんなことはしない。ただ、マヤの正直な気持ちを聞かせてもらいたい」

世話役は、小さい子にするように マヤの背中を ゆったりとさすり続ける。

(この物語は おとぎ話です。登場する人びと、場所、出来ごと等 全て 架空の存在であり、モデルはありません。こんな人びとがいたら良いな、と願って書いているところはあります。)

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