荒技ショートショート_ 家紋
波の音から、どうしてか、夏を思い出す。
ただ、私は、あまり海水浴には行かなかった。
父が病気がちだったこともある。だがそれよりも、海は、潮騒を聞くものだという思い込みがあった。
潮騒は、どこか恐れ多い。広大な海と世界の端っこが同居する世界からの轟である。
そしてどこか懐かしい。聞いているとなんとなく心が落ち着く。
時に荒れ狂う海。平常でも語り続ける海。
波の音は、太古の昔から人を支え、人を癒し。人に恐れを抱かせる神の声でもあった。
そんな日曜日の夕方に、またもや、荒技をやってしまった。
さて、小牧幸助さんの、シロクマ文芸部の最新お題は、毎週木曜日に出る。
「波の音」からはじめるnoteを自由に書いてみませんか?
ジャンルは小説・詩歌・エッセイなど何でもOK。はじめてnoteを書く人も自己紹介の代わりとしてお気軽に!と、いうことで。
そして、田原にかさんからのお題は…。
お題が【幼馴染はじめました】ということで。
また、山根あきらさんの、青ブラ文学部のお題は…。
今回のお題は
「一輪挿しの花」です、とのことで。
今回は、これを文中で使ってみよう。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、「荒技師」だなんて、あんまりおおっぴらに言わないほうがいいよ。
うむ……。そうだな。
3人の企画は両方とも、膨大な数のファンの方、参加希望者を抱えていらっしゃって。お題を出すだけでも、大変だと思うのである。それでもお題を出してくれる。毎週。ほんとうに、ありがたい限りだ。ほんとうに励みになる。
また、今回は、ショウさんのシロクマ文芸部作品を読んでみた。ちょっとその感想を、シロクマ感想文として書いてみる。
「シロクマ文芸部・波の音」で検索して飛んで来ました。
コメント欄に、シロクマ感想文を、ほんの少し書かせて頂きます。
波の音。
海。
雲。
砂浜。
恋人たちの戯れは、言葉をかき消して聞こえないけれど。海辺は青い幸せ色に染まって、やがて夕陽が沈み、昼間のざわめきを消した静かな海に戻るのでしょうね。
良い詩を、夏の午後に味わわせていただきました。
今、生きていられることに感謝して。今宵も、月に祈ろう。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
せっかく出していただいたお題を、小牧幸助さんの始まりの言葉(シロクマ文芸部)と、たらはかにさんの表のお題(毎週ショートショートnote)、そして山根あきらさんのお題(青ブラ文学部)3ついっぺんに書く荒技。まして、シロクマ感想文と、全部で4重の荒技。あまりにもやりすぎじゃないかな。
そうだ、今週は4重の荒技だ。
うむ。
これで何週間だろうか。とうとう3年8ヶ月に突入した。
まあ、続けられるだけ、続けるさ。
心の中の、リトルkojuroが、また、ボソリと、呟いた。
まるで、悪ガキそのものだな。
まあな。
なんのはなしですか。

さて。それでは、本編にまいりましょう。今週の荒技、「ショートショート_ 家紋」約410字を、どうぞ。

波の音からふと、我に返った。
財前は時に、波の音をBGMにして思索に耽る。
脳裏に、幼少期のひと夏の思い出がボンヤリと浮かんでいた。
財前と涼は同学年。兵庫県丹波篠山市の出身である。
そこには梨矢家という由緒ある旧家があり。昨年、そこで起きた怪現象を調査したことがある。
その家に纏わる、何か忘れ去っていた大事なことを思い出しそうになりながら、でもハッキリとは思い出せそうに無い歯痒い感覚を今、味わっている。
自席に戻ると、机上に一輪挿しの花が生けてあった。
「桔梗。花言葉は誠実」
口に出して、全てが結びついた。
泉の鞄のキーホルダーは「丸に五枚桔梗」。あの旧家の家紋もそうだった。
財前と涼と3人で魚釣りをした瑠璃渓。縁側で飛ばし合った西瓜の種。暮れゆくまで眺めた夕焼け。食後の花火。盆踊り。そして、夏の終わり。別れ。
あの夏の訪問者は間違いなく泉だったのだ。
不思議な縁は、知らぬうちから結ばれていて。図らずも、3人は既に幼馴染みだった。

《余滴》
さて。今週の荒技の解説です。特に、田原にかさんの「毎週ショートショートnote」のお題の。
ショートショートnoteカードゲームでは、お題の言葉そのものを入れ込まないで匂わせるのを流儀としています。私としては。
小牧幸助さんの書き出しのお題や、山根あきらさんの青ブラ文学部のお題、私が水曜日に書いている「三題噺」の三つのお題は、その言葉そのものをストレートに文章やタイトルに入れ込むのですが、田原にかさんのお題は、言葉そのものは入れ込まず、“匂わせる”という流儀に沿い、なるべくそうしていっている“つもり”なんです。
しかし一方で、私のこの「荒技」に、お題そのものを探し続ける方もいらっしゃいまして。
ですので、今回も少しだけ解説を。
もちろん苦情は受け付けません。これこそが「荒技」ですから。笑
◆お題【幼馴染はじめました】の匂わせ度について→
今回は、「はじめました」と言いながら、実は始まっていません。
いや、正確には、とっくに始まっていたというお話です。
財前と涼だけだと思っていた幼少期の思い出。その中に、実は泉もいた。きっと涼と泉も、みんなが実は幼馴染みという話を、財前から伝え聞かされるでしょう。
そんな、運命の3人の「答え合わせ」を描いてみました。
◆山根あきらさんのお題=「一輪挿しの花」について。
一輪挿しに生けた花は、桔梗です。花言葉の「誠実」が、今回の物語の鍵となりました。
そして、その桔梗は、梨矢家の家紋にも繋がっています。
桔梗というと、明智家の家紋。さて、その繋がりは、何かあるのでしょうか。
◆小牧幸助さんのお題=「波の音から」について。
人は、景色や匂い、音から、突然昔の記憶が蘇ることがあります。今回は「波の音」を、忘れていた記憶の扉を開くきっかけとして使ってみました。
今回のタイトルは、「家紋」です。
家紋は、その家の歴史や想いを今に伝えるもの。そして今回は、桔梗の家紋が、3人を結ぶ記憶の証にもなりました。
また今回の作品は、過去記事『怪談』『裏稼業』を読んでくださった方への、小さな答え合わせでもあります。
「あの梨矢家」が、実はこんな思い出とも繋がっていた。そんな世界の広がりを感じていただけたなら、作者として嬉しい限りです。
解説はここまでです。
何ですと?
泉は、本当にあの夏の訪問者だったのかって?
そこを書いてしまったら、荒技になりません。笑
ちなみに今回のカバー画像は、「桔梗」で検索して選びました。
それにしても荒技。毎週毎週、本当に頭を使います。
ですが、こうして少しずつ世界が広がっていくのを見るのは、作者として何より楽しい時間なのです。笑笑
そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑っていた。
「コジくん、マッサー(注1)してくれたら、潮騒のような優しさの中で眠れると思うよ」
「…」
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

