十三年分の、賑やかなお土産
私が最後に愛した人は、
ふた周り年上の男性だった。
そのうえ
体重は百キロ近くもあった。
まわりは勝手に
「おっさんだ」とか「デブだ」とか
言ったけれど、
私は恥ずかしいと思ったことなど
一度もない。
悔しかった。
何が悪いというのだ。
健康診断の血液検査の結果は
すこぶる良好だし、
心だってとても元気だ。
こんなにおもしろくていい男は、
そうそういない。
彼と出会ってから付き合うまでに、
一年以上かかった。
ある日、彼に彼女がいると聞いて
私は激怒した。
その日の夜、早速LINEをした。
「ねぇねぇねぇ」
「いま彼女といますので、放っておいてください」
「なんでよケチ、この私とメールしたくないの?」
「ええ」
まったく、ひどい返事である。
ふた周りも
年の離れた彼と一緒にいると、
昭和の歌謡曲が鳴り出すのだった。
あまりに個性的な曲だから、
私はついツッコんでしまう。
「知らないの? ヤバイよ?」
……たぶん違う。
だって、西城秀樹なら「YMCA」だ。
彼が熱唱してみせたのは
「傷だらけのローラ」だ。
ビブラートがききすぎて、
歌詞が聴き取れなかった。
沢田研二の
「勝手にしやがれ」に限っては、
語尾が跳ねすぎている。
本家もビックリだ。
そうかと思えば、
彼は坂道系やNiziUに
詳しいのが腹立たしかった。
テレビを見ながら、
NiziUのお気に入り、
ミイヒ嬢を解説してくる。
「ほら、真ん中の前髪がある子だってば」
「えっ? いま、右に行った子?」
「ちげーよ! お前おっさんか? どこ追っかけてんだよ」
まったく腹立たしいことである。
家ではいつもクイズ番組ばかり見せられた。
彼は歴史にめっぽう強く、
私は壊滅的だった。
しかも番組には、
坂道系のインテリ・クイズ系メンバーが出てくる。
長濱ねる。
何度も聞かされて、
顔は知らないけど嫌いになった。
そんな彼だったが、
私が作った料理を
いつも本当においしそうに食べてくれた。
そのおかげで、
私は彼と暮らし始めてから
すっかり料理が好きになり、
いつの間にか私たちは
外食をしないふたりになっていた。
そうして私は、
彼と十三年間一緒に暮らした。
ある日、
仕事から
へとへとになって帰宅すると、
彼はリビングで
心臓発作で冷たくなっていた。
許さない、と思った。
家の中には
見知らぬ警察官がわんさか
入り込んできて事情聴取が始まり、
私が愛飲している美容サプリまで
いちいち疑われる。
家の外に出れば、
野次馬たちが
ウジャウジャと群がっている。
最後の最後まで
こんなに
賑やかなお土産を残していくなんて、
いかにも彼らしい。
それでも、
私は彼と出会えて
本当によかったと思っている。
……やっぱり、
こんな急にいなくなってしまうなんて
許さないけれど。
