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銅の切削が難しいと言われるワケ


銅は柔らかい金属

銅という金属は、やわらかい素材として知られています。
実際に純銅は硬度が低く、薄い板や細い棒などは人の手でも曲げることができるほどです。
古くから様々な用途で用いられた理由の一つに、その加工性の良さがあると思われます。

切削物としての銅

ところが、削ってみるとその印象は少し違います。
加工屋の間ではむしろ「銅は削りにくい材料」と言われることも少なくありません。

理由はいくつかあります。

熱伝導率の問題

まずひとつは、熱の問題です。
銅は非常に熱を伝えやすい金属です。切削すると刃先で発生した熱が素材全体へ広がっていきます。そのため加工中に素材の温度が変化しやすく、わずかな寸法変化が起きることがあります。精度を出す加工では、この変化を意識しながら取り扱わなければなりません。

粘性(延性)の問題

次に、材料の粘りの問題です。
銅はやわらかいだけでなく、非常に粘りのある金属です。

銅の切りくず


削ったときの切りくずが細かく砕けず、長くつながることがあります。特に旋盤加工や穴あけでは、これが工具に絡みついたり加工面に擦れたりして、品質を損なうことがあります。

内包応力の問題

さらに、応力の問題もあります。
銅は、内部に応力を残しやすい素材でもあります。材料を成形する過程で加えられたテンションのようなものが内部に残っていて、加工によってそのバランスが崩れることで変形します。そのため、削った後にクランプ(製品の把握)を外すとわずかに形が動くことがあります。特に長い部品や薄い形状では、この影響が出やすくなります。

加工屋の感覚で言うと、
削り終わったあとに、少しだけ製品が「戻る」ような感じです。

上方向に「戻る」イメージ

寸法を合わせたはずなのに、機械から降ろすと微妙に曲がっている。
銅の加工では、そんなことも珍しくありません。

構成刃先の問題

そして最後に、構成刃先と呼ばれる現象です。
これは切削中に材料が工具の刃先に付着し、小さな塊のようになる現象です。刃先に被削材の欠片が貼り付いているため、切れ味が損なわれ、表面粗さが悪くなったり、寸法が安定しなくなったりします。

構成刃先に関してはまた別の機会で詳しくお話ししたいと思います。

厄介な素材と言われる銅

やわらかい金属なのに、思った通りに削れない。
厄介な素材と言われる所以です。

もちろん、条件を整えれば非常にきれいな加工面を得ることができます。刃物の形状、切削速度、送り量、切削油など、いくつかの要素がうまく噛み合うと、銅は驚くほど滑らかな表面を見せてくれます。

長く付き合っていると、この素材の癖がだんだん分かってきます。
削るたびに少しずつ理解が深まる。そんな感覚も、この仕事の面白さのひとつかもしれません。

銅はやわらかい。
けれど、簡単ではない。
その分、面白みもある。そんな素材です。


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