カンガルーと傘 【 シロクマ文芸部 】
雨宿りをしていたら、隣にカンガルーがやってきた。
傘をさしたカンガルーはなぜか僕の横で雨宿りを始めた。
傘、持ってるのに。どうして雨宿りなんか。
「傘、ないの?」
「え?あぁ、はい。今日忘れちゃって」
「じゃあ、入る?」
「え、いいんですか?悪いですよ」
「大丈夫、大丈夫。さぁさぁどうぞ」
お言葉に甘え、僕は一緒に入らせてもらうことにした。
するとカンガルーが「はいっ」と言って開いたのは、傘ではなく、袋だった。
「えーっと、これは?」
「あ、袋です。さぁ中へどうぞ」
「あの〜…傘じゃないんですか?」
「あー、すみません。この傘は僕がさすので」
「はぁ…えぇと、では僕は?」
「もちろんここですよ、ここ。袋ですよ。僕はこの持っている傘で濡れないし、あなたは僕の袋に入れば濡れない。ここはまぁ一つの部屋、みたいなものですから。それにこの傘でふたりは元々無理ですしねぇ」
カンガルーはとてもいい笑顔で、自分の袋の口を僕に向けて開いた。
確かにさほど大きくもないその傘では無理か。
傘じゃなくて、袋…うん。ここはありがたくお邪魔させていただこう。
「ではすみませんが、よろしくお願いします」
「はいはい、OKですよー。では袋の中に入ったら縁の部分をしっかり掴むのだけは忘れないで下さいね。スピード、結構速いんで」
カンガルはーは僕を袋の中へ入れると、雨の中をピューっと走りだした。
袋の中はあったかくて気持ちよくて、快適だった。
でも少し経つと袋の中に何か大きな音が鳴り響き、僕は驚いた。
すると照れながらカンガルーが言った。
「あ、すいません。それ、僕のお腹の音です」
僕は途中お店に寄ってもらい、お礼にとカンガルーへ焼き芋を渡した。
相当お腹が空いていたのか、カンガルーは焼き芋をものすごい早さでむしゃむしゃと食べた。
そして食べた後は、走るスピードが格段に速くなっていた。
カンガルーのお陰で僕は雨に濡れずに済み、そしていつもより早く家へ帰ることができた。
珍しく帰りの早い僕に喜んだ5歳の息子がカンガルーにお礼を言った。
そしてお父さんを助けてくれたお礼がしたいと言うと、カンガルーは、じゃあ自分の傘に絵を描いてくれと言った。
息子は喜んで傘に大きなカンガルーの絵を描いた。
カンガルーは「これでもう間違われないで済む」と喜び、傘をさしながらまたぴょーんぴょーんと跳ねながら帰って行った。
たまには雨宿りするのもいいもんだな。
見送りながら僕はふと思った。
【おしまい】
***
今週のシロクマ文芸部でした🐨
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