「仕事を辞めたいわけじゃない。でも、このままも怖い」
匿名を条件に、メールをいただきました。
個別にはすでに返信しましたが、noteで内容を扱ってもいいとのことだったので、今回はこちらでも少し考えてみます。
以前、無料企画を打ち切ったこともあるのですが。
今回も、無料で相談を受けてしまいました(^◇^;)
学習していないのかもしれません。
ペンネームは、
「匿名係長……なんちゃって」さん。
最初の一文は、こうでした。
「正直、最初はちょっとおせっかいな人だなぁと思っていました」
いきなり、なかなかです。
でも、そのあとに、
「そんなあなたに訊いてみたくなりました」
と続いていました。
褒められているのかどうか、少し微妙です。
まあ、たぶん合っています。
相談は、こんな内容でした。
⸻
私は50代前半です。
今の会社には30年近く勤めています。
ものすごく嫌な会社というわけではありません。
給料も生活できないほど低いわけではないし、人間関係も、多少の不満はありますが耐えられないほどではありません。
それなのに最近、
「このままここであと10年働くのかな」
と考えると、少し怖くなることがあります。
転職サイトを見ることもあります。
でも、
「今さら自分を採用してくれる会社なんてあるのかな」
「給料が下がったら困るな」
「また一から人間関係を作るのもしんどいな」
などと考えて、結局閉じてしまいます。
今の会社には慣れています。
仕事もだいたい分かりますし、有休も取りやすいです。
長く付き合ってきた同僚もいます。
だから、全部捨てて転職したいのかと言われると、そこまでではない気もします。
ただ、このまま何もしないまま60代になって、
「あの時、何かやってみればよかった」
と思うのも嫌です。
定年になれば会社を辞めるのは当たり前だと分かっています。
でも、30年近く毎日通ってきた会社に、ある日から行かなくなる自分を想像すると怖いです。
私は仕事を辞めたいのでしょうか。
それとも、ただ変わらないことが怖いだけなのでしょうか。
こんな私を側で見て、どう思いますか。
ペンネーム
匿名係長……なんちゃって
⸻
まず、私はこの人を、
「仕事を辞めたがっている人」
には見えませんでした。
むしろ、今の会社をかなり大切にしている人なんじゃないかと思いました。
30年近く働いているんです。
50代前半なら、就職氷河期の入り口あたりで社会に出た世代でしょう。
その頃に就職して、同じ会社でここまで働き続けてきた。
同世代として、私は普通にすごいことだと思います。
だからこそ、怖いのかもしれません。
嫌いな会社なら、
「やっと辞められる」
で済むかもしれません。
でも、この人の場合は違います。
毎朝起きる時間。
通勤する道。
会社で会う人。
仕事を頼まれること。
誰かに名前を呼ばれること。
30年近く続けば、それら全部が生活の一部になります。
仕事を失うというより、
今まで当たり前だった日常が終わる。
そっちの方が怖いのではないでしょうか。
私はタクシー運転手をしています。
仕事柄、80歳を過ぎても元気に出かける人や、90歳近くても自分の用事を済ませている人を乗せることがあります。
そういう人を見ていると、ときどき思います。
60歳や65歳で仕事を辞めても、その先って案外長いんじゃないか、と。
20年あるかもしれません。
30年あるかもしれません。
そう考えると、定年後に必要なのは、お金だけではないような気がします。
朝起きて、
「今日は何をしようか」
と思える何か。
誰かと話すこと。
誰かに頼られること。
自分にもまだ役割があると思えること。
そういうものも、かなり大事なんじゃないでしょうか。
だからといって、今すぐ転職した方がいいとは思いません。
むしろ、この相談を読んでいると、焦って次の会社を探す必要はないように見えます。
仕事って、探している時よりも、思わぬところからやって来ることがあります。
「週に何日か手伝わない?」
「知り合いが人を探しているんだけど」
「こういう仕事、向いているんじゃない?」
そんな話は、求人サイトではなく、人とのつながりから来ることもあります。
だったら、この先の数年は、
「転職の準備」
ではなく、
「今の会社から少しずつ外の世界にも足を置く準備」
にしてもいいのではないでしょうか。
私はこれを、勝手に
「定年へのソフトランディング」
と呼んでみたいです。
今の会社を辞める準備ではありません。
会社の外にも、自分の居場所を少しずつ作っていく。
昔の知人と会う。
周りの人と仲良くする。
趣味を増やす。
興味のあることを少しやってみる。
仕事以外でも話せる人を増やしておく。
何か文句を言いたくなったら、同僚にぶつける前にチャッピーにでも聞いてもらえばいいです。
AIは、同じ愚痴を多少繰り返しても逃げません。
たぶん。
そして、健康もかなり大切だと思います。
定年後に何をするにしても、身体が動くことが前提です。
新しい仕事をするにしても、旅行するにしても、趣味を始めるにしても、人に会うにしても。
元気なら選べます。
だから50代の今なら、
「次の会社はどこにしよう」
だけではなく、
「この先も動ける身体をどう残そう」
と考えることも、立派な準備なんじゃないでしょうか。
もし家族がいるなら、それも大切です。
特に奥さんがいるなら、定年後は一緒に過ごす時間が今よりずっと増えるかもしれません。
30年間、仕事を中心に回っていた生活が変われば、夫婦の距離も変わるでしょう。
だから今のうちから、一緒に出かけたり、話したり、それぞれの時間も大切にしたり。
仕事以外の生活を少しずつ増やしておく。
それもソフトランディングの一つなのかもしれません。
匿名係長……なんちゃってさん。
私は、あなたが仕事を辞めたいようには見えませんでした。
むしろ、
「大切にしてきた30年間が終わったあと、自分はどうなるんだろう」
と考え始めたように見えます。
だったら、今すぐ何かを捨てなくてもいいんじゃないでしょうか。
あと10年あるなら、
10年かけて着陸すればいい。
人との縁を大切にする。
健康を大切にする。
家族との時間を少し増やす。
面白そうなことを少しだけやってみる。
そこで仕事につながる話が来たら、その時に考える。
定年の日に、
「さあ、明日から何をしよう」
ではなく、
「明日から、こっちの生活を少し増やそう」
くらいになっていたら、ずいぶん違う気がします。
30年近く一つの会社で働いてきた人です。
次の10年も、そんなに慌てなくていいんじゃないでしょうか。
※『横で考える人』については、固定記事の『話す時間について』に書いています。
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お代はいただいていませんが、店の隅に小皿だけ置いてあります。
何か残った日に、そっと一枚。
次のコーヒーと、店主がまた考え込む時間に使わせていただきます。☕️