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子どもの服は迷わず買えるのに、自分の一着は、棚に戻す

試着した一着が、思いのほか似合っていた。 鏡の中の自分を見て、少し気持ちが上がる。

「あ、これ、いいな」

でも、値札を見た瞬間に手が止まる。

「私には、ちょっと贅沢かな」

そう思って、そっと棚に戻す。

子どもや夫の服なら、迷わずレジに持っていくのに。
自分の一着になると、急に買えなくなる。

こんなこと、ありませんか。

本当はカフェのランチが食べたいのに、「一人で1,500円は、もったいない」とコンビニのおにぎりで済ませる。
ずっと肩が重いのに、「マッサージなんて、まだいい」と後回しにする。
家族の不調なら、すぐに病院を調べるのに。
友人へのプレゼントなら、少し高くても笑顔で選べるのに・・・

自分のことになると、なぜか止まる。

「私はいいんです」 「もったいないので」 「また今度で」
これ、お金が足りないからではありません。


「私は、別にいらないので」

あるクライアントさんと、お金について話していたときのことです。

その方はタイムウェーバーのセッションを続けてくださっていて、その日はお金がテーマでした。

ご家族やお子さんのためなら、迷いがありません。
「あの子が喜ぶなら」 「これは、必要だから」 そう思うと、自然に動ける。

けれど、ご自分のことになると止まってしまう。

「私は、別にいらないので」
「もったいないので、自分はいいんです」
「いつかでいいんです。自分のことは」

何度も、そう話されていました。

聞きながら、僕は思っていました。
お金の話をしているようで、本当は別の話をしているな・・・と。


「自分にだけ、ずっとブレーキがかかっていた」

しばらく続けていた、ある日のセッションでした。
その方が、ぽつりと言われました。

「自分にだけ、ずっとブレーキがかかっていたんですね」

その瞬間、空気が変わりました。

自分を責めている感じはありません。
反省している感じでもありません。

ずっと見えなかったものを、やっと見つけたような声でした。


お金が足りない。 そう思っていた。
でも本当は、お金と自分とのあいだに、見えない線を引いていた。

誰かのためなら越えられる。 でも、自分のためには越えられない。

その線をいつから引いていたのか、その方はすぐには思い出せませんでした。


「お母さんはいいから、あなたが食べなさい」

そのまま、少しずつ話してくださいました。

「子どもの頃、お母さんが自分のためにお金を使っているところを、ほとんど見たことがなかったんです」

「お母さんはいいから、あなたが食べなさい」
「お母さんはこれで十分だから」

その言葉を、何度も聞いてきたそうです。

子どもの頃のその方は、本当は言いたかった。
「お母さんも、自分のために使ってよ」
「お母さんも、好きなものを選んでよ」

でも、言えなかった。

そして気づいたら、ご自分も同じことをしていました。
子どものためなら出せる。
人のためなら出せる。

でも、自分のためには出せない。

ただの節約ではありませんでした。
優しさの奥に、ずっと置き去りにしてきた自分がいました。


頭では分かっているのに、レジの前で止まる

「お金は使ってもいいもの」 頭で理解することはできます。

でも、体のほうが覚えていることがあります。
自分のために使うのは、よくないことだと。

その記憶は、正論よりも強い。
だから無理に変えようとしても、また戻ってしまいます。

「使っていい」と言い聞かせても、レジの前で止まる。
「自分を大切にしよう」と思っても、予約ボタンが押せない。

そんなときに要るのは、ブロックを壊すことではありません。

まず、責めずに見つけること。

「ああ、私はこうやって自分を止めてきたんだ」

その方はその日、ご自分の中に引かれていた一本の線を
ただ、静かに見つけていかれました。

「私、ずっとお母さんと同じことをしてたんですね」

その言葉には、悲しさもありました。
でもそれ以上に、やっと本来の自分に戻ってきたような安心がありました。


最初は、小さな花を一束

そのあと、その方は少しずつ、ご自分のためにお金を使われるようになりました。

最初は、小さな花を一束。
次に、ずっと欲しかった靴。
そのうちに、ご自分のための旅行も計画されるようになりました。

大きな決断をしたわけではありません。 急に別人になったわけでもありません。

「私は、私のために使ってもいい」 その感覚が、少しずつ体に戻ってきたのだと思います。

こういう話を、月に1回、少人数のオンラインお話会でしています。
お話会のご案内はこちらです


外そうとするほど、苦しくなる

「お金のブロックを外す」という言い方があります。

でも、力で外しに行くと、かえって苦しくなります。

外さなきゃ。
変わらなきゃ。
もっと受け取れる自分にならなきゃ。

そう思うほど、いまの自分を責めてしまうからです・・・。

入り口は、もう少し手前にあります。

自分を責めずに、見つける。
自分の中にあった線に気づく。
その線を引いてきた自分にも、ちゃんと理由があったと分かる。

そこに安心が灯ると、線のほうが先にゆるみます。


棚に戻していたのは、服だけではありませんでした。

ランチでも、
マッサージでも、
花でも、靴でもない。

「私は受け取っていい」

その許可を、ずっと棚に戻していたんです・・・。

※記事内のお話は、複数のセッションで実際に伺った体験をもとに、個人が特定されないよう再構成したものです。

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