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プレス加工時の異音の検知と金型のメンテナンス

目視では捉えられない金型の初期異常

自動車部品や電子機器の製造で不可欠なプレス加工(せん断・曲げ・絞り・鍛造など)は、高速かつ大量に金属板を成形する加工技術です。一方で、加工は完全に密閉された金型内部で行われるため、内部の挙動を直接目視で確認することは困難です。

金型のパンチ(刃先)の摩耗や欠け(チッピング)、打抜いた破片が巻き上がる「カス浮き」、微小なクラック(亀裂)の発生、油切れといったトラブルは、初期段階では大きな外観不良として現れにくいため見過ごされがちです。放置すると、大量のバリ・打痕不良の発生や、最悪の場合は金型の致命的な破損へと発展します。

プレス加工時における「異音」の発生メカニズム

プレス工程の打撃音やせん断音は、加工状態の変化によって周波数成分や振幅波形が変化します。

  • 刃先(パンチ・ダイ)の摩耗・チッピング

刃先が丸くなったり微小に欠けたりすると、材料を切断する際の抵抗が増大します。これにより、正常ストローク時に比べて加工音の後半部分で擦れ音(高周波ノイズ)が出たり、ピーク音圧レベルが変化します。

  • カス浮き・二重打ち

打抜きカスがダイ上面に残留したまま次のストロークが行われると、本来想定されていない位置で金属同士の激しい衝突が生じます。これにより、突発的な衝撃音と特有の振動が発生します。

  • 金型内部の微細クラック(亀裂進展)

金型母材に負荷が蓄積し、目に見えないミクロン単位の微細クラックが発生・進展する際、高周波の超音波帯域で弾性波(AE波)が放出されるといわれています。この波形は周囲の騒音とは周波数帯域が全く異なるため、初期亀裂をピンポイントで捉えることができる可能性があります。

センサー計測とデータ解析による異常判定

プレス加工現場における異音検知システムでは、プレス機や金型近傍に配置された集音マイクロホン、振動加速度ピックアップ、場合によってはAEセンサーなどが活用されます。

収集された音響・振動データは、プレス機のスライド運動のタイミングと同期させて解析されます。機械の駆動系から生じる定常的な暗騒音をフィルタで除去し、加工ストロークの特定のフェーズにおける音や振動の周波数特性を抽出します。

解析アルゴリズムとしては、正常加工時の波形データを学習し、そこからの逸脱度を多次元データとして数値化する方法や、機械学習(AI)を用いたリアルタイムパターンマッチングが応用されています。人間の耳では判別困難な「わずかな打撃音の違い」を判定し、異常の予兆を自動検出します。

予兆検知が実現する金型メンテナンスの適正化

音響・振動モニタリングによる異音検知は、単なる品質検査にとどまらず、金型メンテナンスのあり方を根底から変革します。

時間基準保全から状態監視保全への移行

従来は決められたショット数後に一律研削するといった使用数による管理が一般的でした。異音検知を導入することで、刃先の摩耗度合いを音でリアルタイム評価し、本当に研削が必要なタイミングでメンテナンスを行う方式へ移行できます。

金型の再研削量の最小化と寿命延長

金型が深刻な欠けや焼付きを起こす前に、摩耗が少ない段階で異音を検知して研削することで、一度のメンテナンスで削り落とす量を最小限に抑えられ、金型全体の総使用寿命を飛躍的に延ばせます。

ラインの突発停止と二重打ち破損の防護

カス浮きやパーツ破断の兆候を検知した瞬間にプレス機へ非常停止信号を送出できることで、金型の破損事故やプレス機フレームへのダメージを未然に防ぎます。

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参考ウェブサイト

せん断加工における異常検知技術に関する研究 ─AEセンサを用いたプレス加工状態の可視化
https://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/reports/pdf/R4/P02.pdf

長野県工業技術総合センター