合気道も「手刀より真剣」が、いい。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:パワーポイントの講義はもはや聞いてもらえない時代が来た。現代の人々の耳目を集めるには、電子的なビジュアルでなくて、リアルの小道具=プロップがいい。合気道の稽古も、より実戦に近いリアルな武器を使うほうが、稽古の質も上がる。トップ画はhttps://00m.in/lxZNX
日本語教育で使ったプロップ
もう30年以上前になりますが、アメリカの大学で、アメリカ人の学生たちに日本語を教えていました。
その時に学んだのが「プロップ」という概念です。
プロップとはpropと書き、propertyを省略した言葉で、 「小道具」を意味します。
日本語教育をする時に、プロップを使うと教育効果が高まる、という考え方です。
プロップの例としては、ペンとかノートとか、消しゴムとか、チョークとか、バッグ、携帯電話など教室においてあるものや生徒が持っているものがあげられます。
また、教師がある状況を示す「絵」を作っても、それはプロップになります。
例えば、笑い、怒り、喜び、悲しみを表す絵や写真です。

これらを学生に見せ、その状況を説明させると、学生の日本語力は伸びる、という事実があります。
プロップは効果的
日本語教育にプロップが有効なのは、2つの理由があります。
一つは、生徒の興味を引く、ということです。
僕も先日「ピクルスの法則」の説明で、ピクルスの入った瓶を学生の前で掲げて、その法則を説明しました。
パワーポイントの絵を見飽きている学生たちに、ピクルスの入った瓶は新鮮に映ったのか、「つかみはOK」という感触を得ました。

リアルな「モノ」は視覚効果があるのです。
もう一つの理由は、モノを見せてそれを説明させることで、学生にモノの本質の理解を促すことができることです。
例えばピクルスの入った瓶を見せて、学生に説明させると、視覚情報からそのものの本質を考えさせることができます。
ピクルスが入っている、賞味期限は5年と書いてある、なぜガラス瓶なのか、フタはなぜ金属製なのか、こうした情報を元に、学生は説明を試みます。
これがモノを見せないで、「ピクルスの入った瓶」を説明せよ、と学生に聞くよりも、身体で生の情報を得て説明を試みさせたほうが、本質により近づけるでしょう。
武道もプロップで生きる
きのうの合気道の稽古では、師範が小刀を持ち出しました。
木製の模造刀ではありますが、いつもは手刀を相手に振り下ろすところを、小刀を使ったのです。

模造刀とは言えども、刀に接触したらケガをしますので、稽古により真剣さと緊張感が生まれ、実戦の感覚もより身についたと感じました。
小刀で切りつけ、それをさばく攻防は五教(ごきょ)という技で、小刀を奪う秘技です。
やはり、小刀を持った攻防のほうがより実戦に近く、道場生もリアリティのあるシチュエーションに満足げです。
究極のプロップは肉体
なぜ、きょう、教育におけるプロップなどという話をしたかというと、ちょっとお話をしましたが、11月に海外での講演があるからです。
パワーポイントの資料は作っていきますけれど、現地のソフト、ハードの規格に合わなかったら悲劇です。
そのリスクを無くす算段をしなくてはなりません。
パワーポイントやメディアテクノロジーなど使えない、という前提で行かなければならないでしょう。
黒板やチョークすらもなかったら。
そこで、僕は今日申し上げた、「プロップ」を使うことを考えています。
しかし、それすらなかったらどうしましょう。
答えは「肉体というプロップを使う」です。
講演のテーマは「日本的経営」なので、日本的経営を武道の動作に映じて、説明しようと考えています。
もうすでに類似の試みをアメリカ、ヨーロッパ、中国で行ってきていますが、今度の出し物は、もっと洗練された徹底したコンテンツが求められており、なんとか早めに完成させたいと思っています。

現代は、ビジュアルが氾濫し、YouTubeやTikTok でさえ、よほど変わった、新規性のある、面白いものでない限り、見向きもされない時代です。
そんな時代に風穴を開けるのは、プロップ、生の小道具ではないかと思うのです。
アナログ回帰、と言ってもいいでしょう。
そして、究極のプロップは「肉体」ではないでしょうか。
ゴタゴタの映像的演出なしの。
野呂 一郎
清和大学教授
