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私の好きなひとこと


「このママ、イヤ!」

3年前の4月。

年中組に上がった娘は、
泣きながら私のことを指差して、そう言った。

なかなかお風呂に入らない娘を、
私は感情的に急かしてしまった。

家に帰ると、私にたくさん甘えて、
時には大きな声を出して、発散していた。


当時、私は幼稚園に勤務していて、
年少組の補助をしていた。

娘が帰ってくるまでに家に帰り、
幼稚園バスから降りてきた娘と手を繋いで帰る。

それが、私のルーティンだった。

でも、私は家に帰っても落ち着かない。

ここも幼稚園。

そんな感覚だった。

余裕がなくなると、
穏やかではいられなくなる。

私は不器用だ。
仕事のことを家にまで持ち帰ってしまう。

少しの間、お休みをもらうことにした。


娘の幼稚園が終わると、
そのまま公園に行けるようになった。

ふと見ると、
娘がジャングルジムの上まで登っていた。

いつの間に、こんなところまで
登れるようになったんだろう。

嬉しそうに手を振る娘の笑顔が、
太陽の光を浴びて眩しかった。

今はまだ、娘のそばにいたい。
家では、娘に集中したい。


年度途中なのはわかっていたけれど、
「家庭の事情」で仕事を辞めた。

そこから転職をして、
週4日の仕事に就いた。

週に1回は自分のための時間。
今思えば、リハビリのような期間だったと思う。

バスではなく、
直接園庭まで迎えに行く日もあった。
いつもより早く帰れるのが嬉しいのか、
ニコニコしながら私の方に歩いてきて、
かわいかった。

そのまま少し遠い緑地公園へ行って、
大きな滑り台を一緒に滑った。

いつもなら行けない場所。
いつもならできないこと。
特別な時間だった。

あの言葉を聞いた時、
このままではいけないと思った。

自分に合った働き方で、
娘との時間を大切にしたい。

今は小学2年生。

小学生になったタイミングで、
生活のために、また転職をした。
今度は事務の仕事。
週5日働くことになった。


今年の夏休み。
一緒にスライムで遊んでいると、
「あっち向いといて」と言う娘。

しばらくして、
「見ていいよ」と言われ、目線を戻すと、


「ママだいすき」

と、スライムを伸ばして文字を作ってくれた。

わからないふりをして、
「なんて書いてるん?」なんて聞いてみたり。

声に出してもらい、笑みがこぼれた。

寝る前には、

「ママだいすき」

そう言って眠りにつく。

その一言で、
また明日からも頑張ろうと思える。

「だいすき」

そう言葉にすると、
穏やかな気持ちになる自分がいる。

眠る娘の隣で、
今日も小さく「だいすき」と返した。





1000字エッセイに参加させていただきました。
ピッタリ1000字になりました🤭

須川さん、まきさん、りっちゃんさん、
素敵な企画をありがとうございました!

そして須川さん、
note5周年おめでとうございます。


#文藝大賞2026 #エッセイ部門


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