Photo by
akisuke0925
[341文字]人間のざらつき
最近の銀行は、つるんとしている。
人がいない。
紙もない。
朱肉も、ボールペンもない。
音さえ、どこか消されている。
カウンターの向こうで、行員が微笑んでいる。
けれど私は、思う。
この人は本当に人間なのだろうか。精巧なホログラムが、私の用件を処理しているだけではないのか、と。
たしかに便利だ。
待たされない。
無駄もない。
経費も減る。
時代は、そういう方向へ進んでいるのだろう。
それでも、昔の銀行には、もう少し「生」があった気がする。
紙をめくる音。
印鑑を押す音。
朱肉の匂い。
少し不器用な会話。
人が人に向かって、頭を下げる姿。
そういうものが、いつの間にか消えてしまった。
つるんとした床も、つるんとした窓口も、つるんとしたサービスも、すべてが清潔で正しい。
ただ、その正しさの中には、人間のざらつきがない。
