ディズニーへ行く前に、娘の指をプリンセスにする必要があった
ディズニーランドへ行く日の朝、娘が妻の指を見て言った。
「ママの指、かわいい!」
妻はこの日に備えて、爪をアナ雪のデザインにしていた。
少し前、一緒に買い物へ行った時に買っていたものである。
「これ、かわいい! ディズニーで付けていこっと」
妻がそう言うのを、娘も見ていた。
その時、私の頭に一つの可能性が浮かんだ。
もしかしたら、娘も付けたいと言うかもしれない。
私は未来を予測した。
そして、特に何もしなかった。
当日の朝。
「〇〇ちゃんも付けたーい! 〇〇ちゃんの指にも付けて!」
娘が床に転がって泣き叫んでいた。
予測は当たった。
対策はしていなかった。
すると妻が、すかさず別の話題を投入した。
「〇〇ちゃん、見て! 赤い屋根のお家の中にパンダさんがいる! 〇〇ちゃん入れた?」
シルバニアファミリーの家に、パンダコパンダが入っていたらしい。
娘は泣くのをやめた。
「うん。ひじきに食べられちゃうから、おうちに入れたんだよ」
ひじきは、わが家の黒猫である。
パンダの安全について説明する娘は、先ほどまで床に転がっていた人と同一人物とは思えないほど冷静だった。
妻はうまく気を逸らした。
私たちは、その隙に出発の準備を再開した。
しばらくして、娘が私に言った。
「パパ、遊ぼう」
「ちょっと準備してるから、待っててね」
すると娘の中で、未処理だった案件が再び立ち上がった。
「〇〇ちゃんの指もプリンセスにしてって言ったでしょ! なんでしてくれないの!」
忘れたわけではなかった。
パンダの避難が、一時的に優先されていただけだった。
問題は何も解決していない。
プリンセスへの思い入れが強い娘にとって、マニキュアは単なる飾りではなかったらしい。
ディズニーへ行くなら、自分の指もプリンセスでなければならない。
家にあった小さなシールを娘の爪に貼ると、その場は収まった。
暫定対策としては機能したが、本採用には至らなかった。
そして家を出た。
本来、この日はホテルへ前泊するだけだった。
途中でいろいろな場所に寄りながら、のんびり向かうつもりだった。
ところが、移動日の主な目的は途中から変わった。
子ども用マニキュアを探す旅である。
店を三軒ほど回り、ようやく3COINSで見つけた。
店を回りながら、私は先日の買い物を思い出した。
娘が欲しがる未来を予測していた人間が、今、その対策品を探している。
頭の片隅に放置した予測の請求書は、移動日に届いた。
「ホテルに着いてから塗ろうね」
そう伝えたが、娘は移動中も何度も早く塗りたいと言った。
ようやくホテルに着くと、娘は当然のように私たちを急かした。
でも、買ったマニキュアは水に濡れると取れる仕様だった。
「お風呂に入ってからにしよう」
娘はさらに待つことになった。
お風呂を出たあと、ようやく娘の爪にマニキュアを塗った。
娘は自分の指を見て言った。
「わぁ、素敵」
翌朝。
マニキュアは取れていた。
三軒回って手に入れた魔法は、一晩ももたなかった。
ディズニーランドは、これからだった。
