流れ星に、願いごとは間に合わない。
星を見るのが好き。
はじまりは、小学校の先生が天体観測をさせてくれたことだった。
いつもは遠くに光るだけだった星を、望遠鏡でのぞく。
夜空はただ暗いのではなく、私の知らない世界でいっぱいで。
夢中になった私は、クリスマスにサンタさんにお願いして、天体望遠鏡をもらった。
大きな宇宙へつながる、自分だけの小さな窓を手に入れたようで、嬉しくて。
星を見るのが好きだからといって、星座に詳しいわけではない。
季節ごとの星座をすらすら言えるわけでも、遠くの光を見ただけで名前を当てられるわけでもない。
それでも、夜空を見上げるのが好きだった。
じっと見つめていると、最初は見えなかった小さな星まで、少しずつ浮かび上がってくる。
星は何も答えてくれない。
今日の失敗を慰めてくれるわけでも、明日の不安を消してくれるわけでもない。
それでも、ずっとそこにいる。
ただ、流れ星だけは、待っていてくれない。
見つけたと思った瞬間には、もう消えている。
流れ星を見たら、消えるまでに願いごとを三回唱えると叶う。
子どものころ、その話を聞いてから、何をお願いするか何度も考えた。
けれど、いざ流れ星が現れると、
「あっ」
と言っただけで、光は消えてしまう。
願いごとは遅すぎて、流れ星は速すぎる。
だから、あらかじめ願いごとを決めておかなければならないと考えていた。
大人になった今は、ひとつに決めることのほうが難しい。
娘が明日も笑っていますように。
家族が元気で暮らせますように。
好きな本を読み、言葉を書き続けられますように。
いつか、小さな喫茶店を開けますように。
守りたいものも、叶えたいことも増えてしまった。
流れ星が願いを叶えてくれるのかは、わからない。
けれど流れ星は、一瞬だけ、胸の奥にしまっていた願いを照らしてくれる。
自分が何を大切にしているのか。
これから、どちらへ歩いていきたいのか。
願いごとは、星に叶えてもらうためだけにあるのではないのかもしれない。
小学校の先生が見せてくれた夜空は、今も私の上に続いている。
あの日、教えてもらったのは、星の名前だけではない。
ときどき立ち止まって、遠くを見ること。
暗い場所にも、目を凝らせば光があること。
今夜、流れ星が見えなくてもいい。
流れない星を眺めながら、自分の願いをひとつずつ思い出す。
そして、星に預けるだけではなく、自分の足で、ほんの少しずつ近づいていく。
それでも、もし流れ星が現れたら。
きっと私は、やっぱり「あっ」としか言えないだろう。
でも、その一文字で十分だ。
願いごとはもう、私の中で光っている。
喜木 拝
あとがき
「星を見る」から始まる文章と、ビンゴのお題「流れ星」を重ねて綴りました。
小学校の先生が開いてくれた、夜空への入口。
クリスマスにサンタさんからもらった天体望遠鏡。
あのころに芽生えた星への憧れは、今も消えずに残っています。

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